ねねこ

君たちはどう生きるかのねねこのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

大きな何かを伝えるメッセージ性や起承転結のある面白いストーリー、というより宮崎駿の遺言を映像化したような作品に感じた。
面白いか面白くないかで言われたら面白くないけど、好きか嫌いかで言われたら好き

最初ストーリーが始まった時は、今回は戦時中が舞台なのか〜暗めの話かな?と思って見始めた。
最初の表現方法がすごく良かったのを覚えてる。
階段を四つ足で駆け上がるシーン、上からのアングルで迫ってくるようにダダダダダッと駆け上がる描写で、「こう言うアングルで描くのか、、、」と印象的だった。
また、火の粉が舞う中、火事があった病院へ向かうシーン。母親が死ぬかもしれないという動揺と、人混み、火の熱さが見ているだけで伝わってきた。視界が暑さと動揺でぐにょぐにょグラグラしていた。
眞人が主観的に感じていたであろうあのグラグラ感を頭でイメージして、しっかり線で描いて表現しているんだ、と思うと本当に尊敬する。

あとおばあちゃんたちと眞人、秋子さんが一列になってお屋敷を歩くシーン。
歩き方がそれぞれ違くて、歩き方だけでキャラクターの性格まで滲み出ているのは本当に流石だなあと思った。

眞人が塔に入ってから「大好きなジブリの世界観きたあ〜」とわくわくにやにや

不思議の塔、本が沢山の部屋、深緑の色合い、海に浮かぶ島、流れ星が草原に落ちていくシーン、洋風とも和風とも言えない不思議な廃墟、変な動物が人間と同じように食事をしている、小さく可愛い精霊、、、、などなど
今までのジブリ作品の要素を全部詰め込んだような世界観で多分セリフなくても楽しめた。

白髭を生やした大叔父様が出てきて、積み木を重ねていて、数は13個。
そしてその積み木はこのザ・ジブリな世界を作り上げているという。
考察見てなくても、「大叔父様って、宮崎駿じゃん!!」となって、今回の映画は宮崎駿個人が、個人的なメッセージを伝えるための映画なのかも、と思い始めた。

そして「この世界は自分が作り上げてきて、もうすぐ終わる、どんな世界もカビが生える」
(正確な言い回しは忘れた)
宮崎駿似の大叔父様が言う。
そこで映画が始まってから今まで、大好きな世界観が詰まった映像をたっぷり楽しんできた私はガーンと頭を打ちつけられた気持ちになった。
宮崎駿はもう82歳で、もうこの大好きな世界観で新しいキャラクター新しい物語作られなくて、これで本当に最後なんだな、、、と切なくなった。

悪意に満ちていない積み木で自分の塔を作れ、と大叔父様は言う。
私個人も絵を描くけれど、絵を描いている時現実世界の辛いことや悲しいことから逃避できる。
戦争や増税や少子化、給料が上がらないことなどなど、、、日々ニュースで聞いているだけでも気が滅入る事を全部無視して、自分の好きを詰め込んだ世界観を作り上げることができる。
現実世界は悪意から嘘をついたり人を貶めたりすることが当たり前に溢れていて、そういうことを描かず宮崎駿監督が思い描く頭の中の世界だけを描いてきたことを悔いているのかな、、?と思って少し悲しくなった

少なくとも私は、綺麗な世界が映画の中にあったからこんな素敵なものがある世界に生まれてきて良かったなあと思えて、そういう作品に支えられて生きているから、そんなこと言わないでよ〜と🥲
これから先も宮崎駿監督がつくるジブリ作品みたいな、ドファンタジーだけど設定や世界観の作り込みが素晴らしい作品が生まれてきてほしいなあ
ねねこ

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