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君たちはどう生きるかのやのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

映画館を出てから、数日間ううむと頭を悩ませ続けた後、
どこぞのインターネットの記事で見た美術館の様な作品という表現が、私には非常にしっくりときた。
そのもの単体でも美しく興味を惹かれることはあるが、正しくその意味を理解する為には、バックグラウンドへの理解や描写からの考察とセンスが求められる。
バックグラウンドへの理解も無ければ、センスも無い為、私にとっては大半のシーンが意味ありげで、何かを示しているということは感じ取れるものの、作品が伝えようとした意味は正しく受け取れた様には感じなかった。

君たちはどう生きるのか。

私が宮崎駿作品に求めていたものは何だろうか?
幼い頃から見てきたジブリ作品、ナウシカやラピュタ、もののけ姫、千と千尋の神隠し、耳をすませば、魔女の宅急便、風立ちぬ。
そのどれもが私に空想の世界の広さと奥行きを与えてくれた。ある時は爽やかな風を感じ、ある時は触れてはならないものに触れた気になった。
それらは現実の中で体感したかの様に記憶してしまう程、没入感のあるフィクションで、そこいらの凡百なアニメーション作品とは一線を画していた。

そんなドキドキとワクワクは私にとって極上のエンターテイメントであり、ありきたりな日常からぶっ飛ばしてくれる劇薬でもあった。
しかしながら、風立ちぬから長い年月が経ち、宮崎駿監督もかなりの高齢となった。
もう彼の新しい世界に触れることは叶わないのかも知れないと、うっすらと理解していた頃、
新作、「君たちはどう生きるのか」を製作中であるということが発表された。

もう出会えないと思った作品に出会えるということ、そしてこれが本当に最後の作品になるかも知れないということから、否応無しに期待は高まっていた。

発表から数年後、2023年7月半ば。
遂に作品は公開され、私は未だにこれを飲み込めないでいる。

解説を読んで、謎めいたシーンの意図が分かった様な気分になり、成程と思うことも多々あった。
ただ、心にはもどかしさが残っている。
それは私が感動した宮崎駿監督の作品は
ワクワクドキドキのエンターテイメントと
芸術的なシーンの数々、
更にそれらが表現する現代社会へのメッセージが
高い次元で融合して、一つの世界を創り出していたのに、今作に限ってはどうもそうで無いのだ。

勿論私の理解力が足りなかっただけと言うことも少なからずあると思う。

ただ、宮崎駿監督ならば、もっと魅せてくれると思っているからこそ、それが叶わなかったことに、自分の中で動揺が生まれてしまっている。

君たちはどう生きるのか。

本作のタイトルは、問いかけであり、そのままメッセージになっている。

それをどう伝えるのかを考えた悩んだ末に、これまでの様な形態の作品では無く、
今回の様な形態にするしかないという結論に至ったのだろうか。

分からない。

何故、表紙が青鷺だったんだろうか。

分からない。

分からないことだらけで、作品のメッセージに繋げられない。形に成せない。
最終的に、主人公が自分の行いを受け止め、大叔父の願いを聞いた上で、やはり自分の意思を突き通したというのは分かる。
でも最終的に世界を崩壊させてしまったのは大王である。
何故、主人公の手でそうしなかったのだろうか。
子供に罪を背負わせたくなかったのだろうか。
新海誠監督の天気の子では世界の崩壊の罪を背負いながらも、健気に生きる子供達の意思を描いたが、
意思を持ち行動することの重要性を描くなら、それに伴う責任をも表現するのは、宮崎駿監督がこれまでの作品で描いてきたことであった気がするのだが。
分からない。
考え続けなさいというメッセージなのだろうかと、それっぽい結論で自分を納得させてしまいたくなる。

願わくば、私の我儘ではあるが、もう一度、あの子供の頃に見たワクワクドキドキの世界を、もう一度宮崎駿監督の世界に浸りたい。
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