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君たちはどう生きるかのmmmのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

宮崎駿がいろんな作品でいつも表現していたことが全部総集編のように切り貼りされている気がした
それは、他の作品ではファンタジーの文脈の中で表現されていたけど、この作品ではそのファンタジーの文脈が削ぎ落とされていると感じた
今までジブリの裏設定みたいなものを読み漁っていた人には初見で少しは楽しめる、みたいな感じなのかも?と思った。わからないけど。私も好きな作品は考察やインタビューなど読んできたけど、全部じゃないので全体的にはついていけてなかったとは思う
でもそれでも、心が動いたシーンをいくつか誰のレビューも見ないうちに書き起こしておこうと思う

特に私が好きだったシーン、
時の扉の前で眞人とヒミが話すシーン
わたしはこっちのドア!あなたを産まなきゃ!素敵でしょ?火は綺麗じゃない!
あなたは生きないと!
あなたって優しい子ねって抱きしめるところ

わたしは子供を残して母親が亡くなったり、その逆の物語にめっぽう弱くて、最初のシーンですら泣いてしまったんだけど、あのシーンは本当に救われるものがあった

誰かを失ったとき、「かわいそう」だと考えるのはまだ死んだことのない人間だけなんじゃないかと思う

生きるとか死んだっていう概念は死んだ経験がない(というか死んだ記憶がない)人間が作り出したもので、他の世界や違う時間軸の世界ではもっと別の軸で共通概念があっても、わたしたちはそれを知ることも出来ないまま死ぬんだと思う。なくても、あっても、知ることはできないし、ないともあるとも言い切れないままこの人生を終えるんだと思う

人が死んでしまった時、落ち込んでしまい普通に生きることは困難なほどだったけど、このところ思うのは魂は死なないってことで、それはとてつもない救いだった。
記憶を消されて、姿を変えて、また誰かと出会う。新しい世界で生きれば食べたことないものも普通に食べるようになったりするんだろう
そう思うと楽になれた、そんな気持ちをあのあなたを産まなきゃ!素敵でしょ?に詰め込まれている気がして、肯定された気がして勝手に救われた

キリコさんの地獄の家にはマトリョーシカのようなおばあちゃんたちの置物があったシーンを見て
そこでも魂は繋がっているんだろうなと思った、違う世界に行って記憶が消えていても。

インコにシチューにされそうになるシーン、それ以外のシーンでも鳥がとても怖い描写になっていて
赤ちゃんがいるから食べない、という発想も最初はなんで?と思ったけど、鶏や牛や豚に人間が取ってる行動だよなと思った。それにきっと、赤ちゃんは柔らかくておいしいとかそういうことなんだろうなと思って恐ろしいと思った。人間を主食にするもっと大きな生き物が、この先の私の人生に現れないと良いな…と思ったりした。

どこかの世界では鳥に人間が食べられているかもしれない
見つからないように逃げ惑って、食べられないように生きているかもしれない
ペリカンが魂?を食べた時恐ろしいと思ったけど、大人を八つ裂きにして食べようとするインコの方がずっと恐ろしかった
海に食べ物がなくなったペリカンが魂を食べて焼かれて死んだが、もしかしたらその魂もまた、別の世界へ行って幸せになっているかもしれないなと思った
地獄には終わりがある方がいいよなぁと思った
あれで死ねない方がもしかしたら更なる地獄なのかも

積み木を積めと言われて、悪意があります、それがわかるお前に詰んでほしいと言ったシーン
よくスピリチュアル的に石には魂や邪気などがうつるというのを聴いたことがある
川に落ちている石を拾って帰ると、その石の邪念に取り憑かれる、というような話で私は結構それを信じている。
あの石にどんな悪意があったのかを考えているけど大叔父の悪意なのだろうなとその後のシーンを見て少し思ったりした。

その後姫と共に行った時、悪意のない石の積み木を用意していて、13個旅に出て集めたと言っていた。
結局その石を積むことはなく、まひとは(好きではないはずの)元の世界へ戻るわけだけど
でも勝手な解釈だけど、世界を自分の思い通りにできるとか、悪意がないものだとか、極論人々の悩みやストレスはそれを望んでいるということなんだよねと思った
だけど断った眞人、そしてそれをぶち壊しにくる鳥の王
あの世界はきっと大王子が作った世界
現実の世界が嫌いで、その世界を捨てて世界を作った大王子が

眞人があの積み木をつめばあの世界にお母さんといられたのかもしれないけど
大王子がもう限界だ、と思う負債はそのまま眞人に受け継がれたんだろう

誰かが、こんな世界嫌だって思って
旅をしたり新しい世界を作っても、そこでもまた争いは起きて、命は有限で、いつか限界が来るってことなのかもしれないと思った

今の世界はとてつもなく汚くて生きにくいかもしれないけど、別の世界を一から作ったとしてもきっと別の理由で生きにくい世界ができるだけなんだと思った

選択ばかりの人生の中で、会いたい人にもう会えなくなってしまう(今の姿と魂と記憶で)世界で、どう生きようかなと思えた最後だった


ただ一つだけ…死別した妻の妹と結婚する父親はキモすぎるごめんだけどあれだけは…
いや、うん、母親と似てるとかね、必要なびょうしゃなんだろうけどあれだけは〜、!!!きもすぎるよ

とはいえ、やはりジブリは好きだなと思った。
いろんなジブリを初めて見た時の気持ちを少し追体験できた気がした。
千と千尋の神隠しが公開された時、千尋と同い年だったこと、映画館で見て鳥肌が立った気持ち、
また思い出せて嬉しかった。

この映画は映画というよりも、思い出の総集編みたいだったいろんな意味で。スコアつけるのむずい。
宮崎駿さんに感謝と敬意。
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