すけ

君たちはどう生きるかのすけのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

 賛否分かれるのはどんな作品においても当然のことだけど、この映画が良かったという人は
・他作品のオマージュ的要素を見つけるのが楽しい
・自分の解釈が生まれたことを作品の理解とイコールにして、分かったつもりになっている
と、映画を自分に落とし込むこと自体を楽しんでいるだけなのでは。本当に面白かったのか?どこがどんな風に心を揺さぶったのか?聞いてみたい。映画の評価って何が基準なのかわからないけれど、私たち視聴者にとって大切なのは心を揺さぶられたかどうかに尽きると、私は思っている。

 そもそも、これは行きて帰し物語な訳だけれど、行きて帰し物語は、非現実世界において主人公が試練を乗り越え成長することが定石。今回の映画における眞人の試練は何だったのか。夏子を探して、母と呼ぶことなのか。大叔父の後を継ぐと言う運命から逃れることだったのか。はたまた、頭につけた傷を自分でやったのだと自白することだったのか。この辺りが非常に弱い。千と千尋の、千は最初に父母を豚に変えられてしまい、元に戻すために自分の弱さと向き合った。そして、努力の中で周りの信頼を得て、無事両親を取り戻した。ちゃんと筋が通っている。まだ子どもの眞人が夏子を母だとたったの数日で受け入れないことが弱さだとは思わないし、母の死を受け入れられないことがそんなに悪いことか。頭に傷をつけて心配をかけたことよりも、父の的外れなコメントの方がよほど腹立たしい。
 あちらの世界の構造も掴みづらい。下級生物の鳥たちはあまりよくない暮らしをしていて、ペリカンのセリフやインコの様子から、ある種の風刺なのかと思わせられる。生きているものよりも死んでいるもののほうが多い世界は、生と死が交わる場所なのだろうが、子を宿す夏子だけが守られて子である眞人は食べられそうになる道理もいまいち分からない。わらわらがペリカンに食べられるのは精子が卵に辿り着く難しさの表れなのだろうが、だから何?と言う感じ。キリ子が出てきたのはなんでかもよくわからないし大叔父の治めるあの世界が現実と比べてそんなにいいものかそれもいまいち。異世界の神って、駿やん!とつっこみたくなるけど、そういう解釈ももはやどうでもいい。とにかく言いたいことややりたいことがあったのだろうが詰め込みすぎて、単純に面白くない。
 面白い面白くない、良い良くない、色々意見があるのは分かるけれど、死んだ母親をわざわざ出してきてドロドロにしたり、母親の妹をお母さんと呼ばせたり、ストーリー性に欠ける中盤が悪趣味だと思った。
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