シュンヤ

君たちはどう生きるかのシュンヤのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

 ファンタジーの世界に魅入られてサギ男の誘惑に乗ってしまった眞人は、アニメに魅了された幼少期の宮崎駿
 悪意のない13個の石でファンタジーの世界を守ってきた大叔父さんは、アニメ監督として現代のアニメ産業を支えてきた現在の宮崎駿を表している。

 大伯父さんによって悪意のない石のみで構築されたファンタジー世界は以下に見られる二つの表現からわかるように、眞人の生きている現実世界に比べて非常に単純な構造をしている。
 まず一つ目として、「この島から飛んで行こうとすると気づけばこの島に帰ってきてしまう」と嘆くペリカン(?)の言葉は、ファンタジー世界に一つの島しか存在していないことを表現しており、悪意のない世界が単純な構造をしていることを表現している。
 さらに二つ目として、この世界はインコによって支配されており、ファンタジー世界が単純な構造をしているだけでなく、その住人さえもが単純な思考しか持てないことが例えられている。(インコは人間の言葉を繰り返す鳥なので、住人が自律的な思考を持たないことを暗喩している。)

これらの経験から、眞人は「悪意のない世界はつまらない」と考えるようになる。これは、幼少期の宮崎駿が「人間の美しい部分のみを写したアニメはつまらない」と感じた経験を表現しているのではと考えた。

また、長い時間1人でファンタジー世界を支配しつつ、その後継者を探し続けた大伯父さんの姿は、長年日本のアニメ産業において第一線を走り続けた現在の宮崎駿自身を表している。眞人が後継者を辞退したことからも、宮崎駿は自分の後を継ぐようなアニメ監督を育成することができなかったと感じている。


何度も引退詐欺をしてきた宮崎駿だが、年齢的にもおそらくこれが最後の監督作品となる。監督人生最後に、観客のことを考えずに自分のやりたいように作品を作った結果、多くの人にとってはよくわからない作品となってしまったようだが、この作品に宮崎駿のアニメ人生が詰まっていると思う。上映期間中にもう一度鑑賞したい。
シュンヤ

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