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君たちはどう生きるかのふむのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

アート映画 ですね。難解w。
娯楽作品に浸かってた私には手厳しい作品でしたが、観たあともずーっと作品への思考に取り憑かれる。ある意味コスパ最高かも。

<蛇足1>
メインのあらすじは、千と千尋の神隠しの少年思春期版みたいな話。実母と義母ネタで鬱々してた少年が、なんやかんや成長してちょっとスッキリしてEND的なやつ。
抽象的なパーツは宮﨑監督の自叙伝を指してる模様。
とにかく映像と音楽が美しい。不思議の国に惑わされますな。



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〈蛇足2〉
観ても分からん系だろうと避けてたけど、「プロフェッショナル 仕事の流儀/ジブリと宮﨑駿の2399日」をチラ見しちゃって、めっちゃ頭に残ってるところにゴールデングローブ賞をとった快挙が報じられたから、祝いの推し活課金がてらウッカリ鑑賞。
ラストのたぶん寝たらアカン所をガッツリ寝たけど、プロフェッショナルで要点をなんとなく視聴済と思われるから無問題と仮定。

本作7月に公開して、仕事の流儀放送が12月放映。この間や違和感は鈴木プロデューサーの意図なのかな。鈴木Pにアオサギの如く映画館に誘導された気がして解せません。
大衆アニメ映画の巨匠がアート映画でアニー賞とアカデミー賞とったら、まじカッコええので応援してます。

アメリカのクチコミサイトのロッテントマトでは97%と高評価。千と千尋の神隠しと同点。海外評価は「アニメ界の巨匠の夢を覗いているようで素晴らしいアート映画」と絶賛。昨年のアカデミー賞でエブエブが来てたしギレルモ・デル・トロ監督が宮﨑監督を賞賛して下さってるから風向きは悪くないはず。ロビー活動次第なのかな。今のところ敵対勢力はスパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバースやマイエレメントあたりかな。
米製作者組合が1月12日、PGA賞の本作ノミネートを発表。アカデミー賞の前哨戦として2/25の結果が気になる。

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〈蛇足3。主に自分の振り返り用メモ 観終わってから調べたものや考察等。以下ネタバレ系。受け止め方は人それぞれ。〉

・誰にみてもらいたい作品か:
鈴木Pのインタビューより「宮さん(宮崎駿)は実はただひとりの観客を意識して、映画を作っている。いちばん作品を見せたいのは高畑勲」と語っている。宮崎監督自身もインタビューで「宮崎さんは夢を見るんですか?」という問いに、「見ますよ。でもぼくの夢はひとつしかない、いつも登場人物は高畑さんです」と答えたことがある。by宮崎駿氏wiki-高畑勲との関係

・宣伝しない理由:
The first SLAMDUNKが事前情報なく批判されつつも黒字大ヒットした影響の説。/事前に内容は伝えないとあらかじめ決めていた説。「製作委員会方式を作ったのは僕。でも今の映画の宣伝状況はどこかで1回ストップさせなきゃいけないと思った。」「普通にやったら絶対(制作費を)回収できない。」「上を行くために。」by NHK NEWS WEB 鈴木Pインタビュー/パンフレットにめぼしい情報は無い説。/海外収益含めると、もう黒字まで行ってる説。/もう歳だから未完のまま亡くなることも想定していた説。

・ジブリ単独出資作:
初めて宮﨑監督が思う通りに作れる環境を得た作品。製作時間は納得が行くまで。「自社で製作費をまかなうということはですね……赤字になったっていいわけですよ(笑)」「今回は本当の博打です」鈴木Pインタビューより

・本「君たちはどう生きるか」:
タイトル同じだけど内容は別。/作中、主人公がこの本を読んで涙を流し、義母を受け入れていくきっかけになってる。/1937年に本が発売された当時は軍国主義が進み言論の自由が失われつつあったが、広い世界と自分で思考する大切さを唱えている。後に言論統制により発禁。/個人的に映画のタイトルは、幼少期から大人になるまでジブリまみれだった日本人へのエールと様々な問題提議と仮定。/英語版タイトルは「The Boy and the Heron」。How Do You Live?だと英語版で伝わらない説。アート映画に抵抗のない海外受けとショーレースを戦略的に狙ってるようにも感じる。

・本「失われたものたちの本」:
本作のベース説。この話を読むと映画がよくわかるらしい。アマゾンで試し読み中。読みやすいけど出だしから鬱くて合わず進まず。


※ アート映画:
一般的に、芸術性が高く、大衆市場よりもニッチ市場向けに作られた自主制作映画。「本格的かつ芸術的な作品で、しばしば実験的な要素が入ることを意図していて、幅広い人気を集めることは念頭に置いておらず」、「主に商業的な利益のためではなく美的感覚を追究するという理由で作られ」そして「 型にはまらない、あるいは非常に象徴的な内容」を含んでいる。by wiki

・補足: アート映画は作品への歩み寄りが必要。エンタメ映画と同じ感覚で鑑賞した者達によって駄作扱いにされてしまう場合が多々ある。とりわけ本作は国内外でクチコミ評価が大幅に異なる。昨今、海外から置いてかれる日本市場をもっと危惧するべきでなかろうか。

・映像美:
それぞれのカット毎に際立たせたい場面があるそうな。序盤の炎とジブリダッシュは凄かった。CGのように見えるが手書きだそう。スゴすぎる。過去作に因んだシーンも動物も人も、どれも素敵だったな。アオサギの中に人がいる描写はCGでは表現出来ないとか。

・モデル:
アオサギ:鈴木敏夫氏、眞人:宮﨑駿氏、大叔父:高畑勲氏。プロフェッショナル仕事の流儀より。/父親のモデルは宮﨑監督の父親説。宮﨑監督の父は大恋愛の末に学生結婚して1年もたたないうちに相手が結核で病死し、今度は1年もたたないうちに宮﨑監督の母と恋愛結婚し、周りがのけぞった逸話が生かされている説。

・宮﨑監督の幼少期:
太平洋戦争が始まり、一族経営の航空機製作所が宇都宮に移転したこともあり、幼児期に家族で宇都宮に疎開し、小学校3年生まで暮らし、戦後は東京に戻ってる。宮﨑監督が6歳くらいの時に母親が結核を発症し、以後9年間ほど寝たきりの状態だったため幼少期に母に世話をしてもらった記憶がほとんどないまま青年期を迎えた説(母の没年は71歳。若い…)。/本作の眞人は、母の死に際に何も出来なかった後悔、戦闘機造りはビジネスの為と割り切ってる父を軽蔑する一方で、父の権力と財力をちゃっかり利用している自分に嫌気が指す。そして若く美しい義母の夏子に異性を感じ意識してしまい距離をとってる説。

・戦争3年目に実母が他界し4年目に疎開し義母ができ、もうお腹に子が宿っている件:
現代の感覚だとかなりヤバくて抵抗あるけど、戦時中は「種の保存」の生存本能により婚活と妊娠が早かった説。

・母の妹の夏子と再婚:
「もらい婚」といい、昔はよくあった再婚方法。結婚によって培われた家族の資産が崩壊するのを防ぐ。現代の感覚だとかなり抵抗あるけど、大河ドラマでよくあけるヤツですな。/夏子目線だと、姉が神隠しにあい不安な思春期をすごしている。姉に火災で先立たれ孤独感がある。憧れの男性と結婚して嬉しい半面、夫は仕事であまり相手をしてくれず。義理の息子は懐いてくれないし頭を怪我して自分のせいかも。神隠しにも合いそうで不安。悪阻マジ辛い。からの闇堕ち。または、眞人の母が闘病中から父親と逢瀬を繰り返していたならば、眞人への罪悪感からの闇堕ちかも。

・眞人の頭の傷:
右脳側に損傷(聖痕)を作った事でアオサギと会話し幻視幻聴が始まった(幻視者)説。眞人にとっては「僕の悪意の印」。

・鳥が多い:
2016年に他界された鳥と自然造形が得意だったジブリのアニメーター二木氏を忍んだ説。本作を製作し始めた年だったとのこと。/「烏合の衆」の言葉にちなんだ説。

・アオサギ:
不死鳥の説。手塚治虫氏の火の鳥のオマージュかパロディ。byエジプト神話。/唯一色々な世界を自由に行き来できる存在。大叔父の元に眞人を連れていくのが目的。/鈴木Pの如く眞人に付かず離れず寄り添い、友人になる/眞人の弟の説。弟いるシーンにはアオサギ出てこなかったとか。

・サギ男の鼻:
手塚治虫氏の火の鳥に出てくるサルタヒコのパロディ説。猿田彦は天皇家ゆかりの天狗の国津神であり、カラスであり、太陽神をさすとか。

・ペリカン:
烏合の衆(群衆、兵隊、白血球、小さな悪意)説。

・わらわら:
産まれる前の魂=胎児、DNA(精子、卵子、受精卵)説。

・インコ:
ピーチクパーチク噂に左右され主体性のない自分勝手な聴取の比喩説。不満を感じると口を開き、一定の満足感あれば静かな様。

・「ワレヲ学ブモノハ死ス」の門:
師の教えを守りながらも創造を加える者は成長して、ただまねするだけの者は消えていく。似せるとは真髄を追求すること、象るとは表面的な真似をするという意味説。by wiki 。/宮﨑監督からクリエイターへのメッセージかな。俺の真似ばがりせず超えていけ的な説。/

・アオサギとヒミに導かれて異世界の旅:
ダンテの詩篇『神曲』がベース説。旅の中で浄化されて行く。

・崩壊寸前の下の世界:
どんどんブラック労働になるアニメ製作の闇の比喩説。需要も供給もあるのに生活苦のアニメーターが多く続けていけない。夢を追い体を壊すまで犠牲になる者達。/大叔父含めてスタジオジブリそのもの説。宮崎駿氏は毎作品引退を掲げてるので作品完成の都度無職になり、才能あるアニメーターの生活苦。また、ジブリは製作過程が独特なので転職先でまた1から覚えなおさなければいけない闇説。後継者が育たない説。/働けど賃金が上がらず過酷な労働環境は日本の中小企業など全体の悩みである。

・大叔父:
醜い現実世界を捨て、理想郷の世界の主として静かに時を過ごそうとする。眞人とヒミ(若い時に神隠しに1年あってた時の眞人母)は醜さや愚かさも人間の一部として大叔父の考えを否定。それぞれの意思で現実世界に帰る。高畑勲監督以外に心理学者ユングの要素が加わってる説。

・積み木:
13の積み木は宮﨑監督の映画作品数説。3年ごとに13個でジブリ39年説。8個の積み木は高畑勲監督の作品数説。/大叔父が塔に篭っていた13年間の説。

・神隠しの時差:
現実世界世界の1年=塔の中で3日の説。ヒミ(母)は3日塔にいたから神隠し1年。眞人は1晩寝てるから2日塔にいて神隠し8ヶ月=終戦し戦闘機の風防をかたずけている。(大叔父は現実世界の大叔父の部屋で1年に1個、13個の石を積んでいたが眞人には「3日に1つ石を積む」と説明していた)

・キリコさん:
謎世界の馴染み方が半端ない笑。大叔父の側仕えで一緒に来て迷ったのかな。眞人母と現実世界に戻る説。/彼女も母性の象徴だった説。下の世界で眞人を助けたり色々なことを教える。また魚の捌き方を教えるシーンはセックスの象徴との説。

・実母:
火の巫女なので病院から転移してピンピン生きてほしいな説。死体は見つかってない。息子産んでノルカンからのパリピ中だといいな。

・監督の改名:
宮崎→宮﨑へ。監督のwikiには本作からと書いてあるそう。2016年頃から宮﨑になってるようなので本作の製作開始時からかな。あれかな、シン・ミヤザキ的な覚醒かなw。今後も応援しております。

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2024.3.11〜追記

米国アカデミー賞長編アニメーション部門の受賞、おめでとうごさいます。

PGAはスパイダーマンだったから、とても嬉しかったです。すごい快挙ですね。
めっちゃ鳥肌やばい。

〈蛇足4〉

鈴木Pが「宮崎駿の黙示録」的なことをといったことをおっしゃてたので一応記録。

・黙示録とは:
①「新約聖書」の最後の一書。95年ごろローマの迫害下にある小アジアの諸教会のキリスト『教徒に激励と警告を与えるために書かれた文書』。この世の終末と最後の審判、キリストの再臨と神の国の到来、信仰者の勝利など、預言的内容が象徴的表現で描かれている。ヨハネ黙示録。アポカリプス。

②転じて、『破滅的な状況や世界の終末などを示したもの』のこと。by goo辞書

→ですよね 笑。


〈蛇足5〉
・海外でウケたワケ:
タイトルを「少年とサギ」に変えたから、シンプルに多感な少年が利己主義を克服し、他者のために生きることを学ぶ成長物語として鑑賞できた説。/映画の予告がちゃんとあった説。youtubeにあったw。日本でも映画館や公式HPでくらい流せばいいのに。/戦争で多くを失った少年が、夢の世界で母たちを助け、大叔父の跡を継がないことで戦争を否定したように見える説/不思議な表現はアート慣れした海外にとっては、力強いイマジネーション表現とスムーズに受け止めた説。

・日本で賛否両論だったワケ:
タイトルに惑わされ混乱した説。/シュルレアリスム(不思議な表現)への反応が二分化説(子供の方がすんなり受け止めてるかと)。/娯楽作品とyoutubeに慣れ過ぎた説。/初見で理解できないとクチコミで中傷してスッキリして完結する説。/深掘りしたら底なし沼だった説。考察中毒続出。(母への未練からの解放/宮崎監督の自己投影や業界を憂う様な表現の一方で、手塚治虫氏の弔いでの騒動を思い出し揶揄するクチコミ増/過去作からのオマージュ/主人公は宮崎監督の幼少期の投影だが、他の色々なキャラにも監督の思いを投影しているように感じ混乱するところ)。

・どうでもよいけど、絵本「チーズはどこに消えた?」を思い出しました。ネズミは本能で動いてチーズを見つけ、小人は常識にとらわれ後手後手。海外と日本の反応のようで、青カビ臭がほのかに薫る。
ふむ

ふむ