Joker

殺人に関する短いフィルムのJokerのネタバレレビュー・内容・結末

殺人に関する短いフィルム(1987年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

登場人物が3人でそれぞれの殺人の物語かと思ったけど、それぞれ被害者、加害者、弁護士として物語が進むにつれて互いに関係していくストーリー構成がよかった。

個人的にこの映画が伝えたかったのは、誰も悪くないことだと思った。
もちろん、人を殺したヤツェクは悪いし罪を償うべきだと思う。しかし彼が人を殺しそな極悪人よりかは、家族も自分自身も居場所さえも失った空っぽな青年だと感じる。そんな彼が家族を離れてこうなってしまったのも、彼が語るように彼の妹の死のせい。彼は未だに妹の死に責任を感じている。元は妹思いの良い青年だったのだと思う。殺人を起こした彼はもちろん悪いけど、根本的には彼は悪くないと思う。妹の死が無ければ、街に出て独りきりで責任を感じ、苦しむことは決してなかったから。

彼を弁護するピョートルも、ヤツェクを救えなかったことをとても悔やむが彼は悪くない。彼が判事に聞いて得た答えと同じように、どんな優秀な弁護士でも勝てない事件はあるので彼に落ち度はない。

全体的に、流石キェシロフスキと言うか、リアリティが素晴らしいと感じた。さりげないショット、さりげなく細かい仕草、実際に起こっているかのような事の成り行きなどにリアリティが凝縮されていた。
特に印象的なのが、最後の死刑場のシーン。普通なら少し省略しそうなところも、ありのままのに写す。だから、感情がないと思われたヤツェクが最後の一服をした後に抵抗する際の彼の生きたいという気持ちや、そのヤツェクを見るピョートルが感じる責任や見ていられなさが身にしみじみと伝わってくる。絞首刑にされているシーンもカットなしでありのまま写すことによって、その残酷さが身に伝わり、ラストの1人で泣くピョートルの辛さが心から伝わってきた。

殺された運転手は殺される理由がなく、ヤツェクは一つの出来事によって人生が狂わされ、ピョートルは初の弁護なのに被告を救えず未練を感じ苦しむ、というように誰も苦しむ必要がなかったのに苦しんでしまう絶望感がすごった。




言いたいことを代弁してくれているレビュー
http://bonobono.cocolog-nifty.com/badlands/2005/04/but_only_love_c_931d.html
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