シバザキ

ゴジラxコング 新たなる帝国のシバザキのレビュー・感想・評価

4.2
 こういうものを安直に面白いと言わないために今までいろんな映画を見て知見を蓄えてきたつもりなんですけどね。すいません、自分の気持に嘘つけないっす。超面白かった。

 前作『ゴジラvsコング』は両怪獣をキャラクター化しすぎて、そこがあんま好きじゃなかったんですけど、そのふざけ方もここまでやられてしまうと裏返って面白さに転じてしまう。コング側の話は地球の地下世界で繰り広げられる猿の惑星だし、ゴジラはでかいネコかイヌじゃん。コイツらがセリフもなく雄叫びと表情筋だけで物語を構成してしまうのだからずっとすごいものを見せつけられているという事実だけが残る。メインヴィランとなるスカーキングの初登場シーンとか、首の傾け方がスゴすぎて「ウソだろ」とずっと思ってました。ハイローシリーズの強敵かよ。話の流れとかキャラクター像は特に目新しいものではないけど、それをバカデカい怪獣たちでやっているところは初めて見るのでスゴさだけが残る。

 アクションシーンも狂っていて最高。最初から最後まで割とバトってばかりだった気がする。ゴジラとコングが並走してカチコミをかけるなんてシーンは思いついても普通はやらないが、それを平然とやってのける映画であるのでそれより狂っているシーンが多々存在する。でかい猿が背骨をムチのように振り回しビルを投げつけるみたいな今まで見たことのないシーンが目白押しで、いい意味で空いた口がふさがりません。怪獣プロレスとは言うが本当にプロレスをさせるやつがあるか。

 モンスターバースは人間がバカでドラマが薄っぺらいとよく言われますが、本作は出てくる人間の数も時間も減らすことで必要最低限の要素のみを抽出しそこがノイズにならないようにしている。いちばん狂っている作品がいちばん人間パートまともなのなんなんだ。特にコングの歯を抜くために呼ばれた獣医のスラッパーがシリーズ史上最も有能で魅力的なキャラクターであった。人格者でもあり有能で一切ストレスのないキャラクターをこんなとこで出すんじゃないよ。

 正直、この映画でやっていることは反則にちかく「それがOKなら何でもよくなっちゃうじゃん」と思わなくもなし。そこで多くの人の反発も食らうでしょう。でも自分はここまでの振り切りと思い切りの良さがオーバーフローを起こし奇跡を起こしているように見えて最終的に笑顔で追われたのでオールOK。どこかの編集長もみたいな人に「映画は面白ければいいんだ。面白ければ勝つ。当たり前だ」と言われればそれまでのように、面白ければイイんです。でもこういうことをやらないためにいろんな映画技法とかが生み出されているのではないのか。
 下手すれば『猿の惑星 キングダム』よりも本作のほうがサル要素が強いかもしれない。
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