ねむろう

うつろいの時をまとうのねむろうのレビュー・感想・評価

うつろいの時をまとう(2022年製作の映画)
3.1
2023新作_112


《matohu》とは、
「不易」と「流行」
「定型」と「破調」
「伝統」と「革新」
全てを包含し、かつ際立たせる"言葉"である。



【簡単なあらすじ】
2020年1月。東京・青山のスパイラルホールで、服飾ブランドmatohuの8年間のコレクションをまとめた展覧会『日本の眼』が開催された。matohuは“日本の眼”というタイトルのもと、「かさね」「ふきよせ」「なごり」など日本古来の洗練された美意識を表す言葉をテーマに2010年から2018年までの各シーズン、全17章のコレクションを発表してきた。デザイナーの堀畑裕之は大学でドイツ哲学を、関口真希子は法律を学んでいたが手仕事や服作りへの思いからファッションの世界に飛び込む。堀畑はコム デ ギャルソン、関口はヨウジヤマモトでパタンナーとしてキャリアを積む。そして2005年にブランド「matohu」を立ち上げ、彼らは“長着”という独自のアイテムを考案した。着物の着心地や着方の自由さから着想を得ながら、今の生活に合わせた形で作り出されたモダンなデザインの服である。
2018年、matohuは『日本の眼』最後のテーマとなる「なごり」コレクションの制作に取りかかり、伝統的な技術を持つ機屋や工房と協業しつつ、テキスタイルを作り上げていく。堀畑と関口はアトリエで激しい議論を繰り返しながら妥協することなくデザインを完成させ、そしてファッションショーの日を迎える。



【ここがいいね!】
ファッションという一つの芸術と、日本に昔からある「言葉」を掛け合わせた全17章のコレクション『日本の眼』。それは、改めて日本を見つめ直すこと、そして改めて服飾デザインとは何かというものを見つめ直す試みでありました。そのような試みを私たちも行ってみようという、非常に奥深い作品でした。
昔から日本にある言葉というものが、現代においてはどのようなところに現れているのか、その捉え方や定義は昔と今とで変わっているのか、もしくは変わっていないのか、というところを問うような作品だったように思います。



【ここがう~ん……(私の勉強不足)】
17のテーマそれぞれがあるわけですが、この作品では7つぐらいのテーマだけを取り扱っていました。もちろん、全てを扱っていては時間が足りないですし。全てを扱おうとすると一つ一つのものが薄れてしまいます。しかし、一つ一つが素晴らしいテーマなだけあって、ちょっとだけでも全てのコレクションとそこで実際に形になったファッションがどういうものだったのかというところをイメージカットだけでも見せてもらえるともっと良かったと思います。



【ざっくり感想】
服飾や絵画そして、もしかしたら文芸というところも一つの芸術かもしれませんが、解釈の幅のあるもの、表現の幅のあるものをいかに芯を貫いて作り手から受け手へ投げていくかっていうところが、芸術の一つの面白いところであると思います。
そして、私たちはその打ち出しされたテーマやコンセプトをどう捉えるのかというところも、非常に大事だなと改めて思わされるような映画でした。
自分の中の「アート心」というか、美しいものを愛でる心っていうものが動く作品だったと感じます。
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