ねむろう

コンクリート・ユートピアのねむろうのネタバレレビュー・内容・結末

コンクリート・ユートピア(2021年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

2024新作_002


アパートは、住民のもの!!


【簡単なあらすじ】
世界を襲った未曾有の大災害により一瞬で廃墟と化したソウル。唯一崩落しなかったマンションは、生存者たちで溢れかえっていた。無法地帯となったいま、マンション内でも不法侵入や殺傷、放火が発生。危機を感じた住民たちは主導者を立て、居住者以外を追放し、住民のためのルールを作って“ユートピア”を築き上げることに。住民代表となったのは、902 号室のヨンタク。職業不明で冴えないその男は、権力者として君臨したことで次第に狂気を露わにする。そんなヨンタクに傾倒していくミンソンと不信感を抱くミョンファ。極限の状況下でヨンタクの支配が頂点に達したとき、思いもよらない争いが勃発する。そこで明らかになった、その男の本性。果たして男の正体とはー。



【ここがいいね!】
非常に「象徴的」な内容だったかなというふうに思います。
おそらく、「韓国と北朝鮮」の話であり、「韓国国内」の話であり、「ポピュリズム」の話であり、最後には「失楽園」の話にも見えてくるような、重層的な作品になっていたように思います。
やはり、このような大災害が起きたときに冷静でいること、冷静でいられないこと、そしてその中で災害を問わず権力を持ってしまった人間は、常に自制をしなければいけないという戒め的なものでもありますし、それを盲目的に信じてはいけないという教えにもつながってくるのかなと感じました。
途中は、かなりホラー的な演出もあったり、冒頭の代表を決める際に碁石が登場しますが、その碁石が後に口の中に詰められる場面も描かれて、イヤな(褒めてます)使い方するなと感じました。
そして、その白い碁石を詰められる横で、おばあちゃんが白い泡を吹いてるという、とてもブラックなジョークも効いている演出も流石でした。
さらに、全ての韓国映画がそうではないですが、作中で実際にあるポップソングが使われることがありますが、本作でもすごく「軽薄に」使われているところも良かったです。



【ここがう~ん……(私の勉強不足)】
イ・ビョンホン演じる、このアパートの代表になる男がいるわけですが、簡単に言うと、その人が別の住人に成り代わっていたという話になるわけです。
イ・ビョンホンの元の姿が、詐欺師をアパートの部屋で襲ったときに災害が起きたから入れ替わることができたというところではあるのですが、そのシーンでは電話口で借金取りに襲われている娘と妻の声が聞こえていました。
一方で、娘が美容院に行き、そしておそらく美容院が災害に遭い、そこから出ているであろう娘の手を握って泣き叫んでいるという回想もあり、その辺りの時制がどうなっているのかなと感じました。
もしかしたら、災害が起きた少し後に、その美容室のところに行ったら娘を発見した、という流れなのかもしれませんが、そのあたりの描き込みが少なかったのではないかと感じました。



【ざっくり感想】
アパートの住人以外は悪である、追い出し、なんだったら殺してもいい、というような世界から飛び出した主人公夫婦は、助け合いの中で生きる世界を垣間見るラストでした。
そんなところを見るに、ポピュリズムへの批判というところまで射程が及んでるところが、やはり韓国的な作品だったなと感じる作品でした。
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