フクイヒロシ

丘の上の本屋さんのフクイヒロシのレビュー・感想・評価

丘の上の本屋さん(2021年製作の映画)
4.0
異色作と言っていいのでは。

メッセージはいくつか発せられているけど
本命の特大メッセージはラストにドーンと提示する。

喪黒福造だったらホントに「ドーン!」ってやってると思いますよ。
少年の顔もドーンってやられた表情してたし(してない)。

**

人物の背景が極端に薄い。
これはわざとでしょう。

だって主人公である古本屋の店主リベロさんも名前が「自由Libero」って意味であること以外に人物像がない。

相棒となる少年エシエンも移民であること以外語られない。
家族構成や何に困ってるとか何がしたいとかは語られない。

ほぼアイコンのような、記号のような存在。
その分、観客が自分と置き換えることが容易。

**

観客は、若者に「知」を伝えるリベロでもあり、「知」を受け取るエシエンでもある。

実際僕はエシエンが最初の方に借りる本、
ピノキオも星の王子さまも白鯨も読んだことはない。。
今年で45歳になりますけど。。
全然エシエン側です。。

年齢的にも、責任的にもリベロ側であらねばならない。
そのためには自分に「知」がないとね。。

**

この映画、ラストのドーン!が全てなわけです。

それまでゆっくりと少しずつ積み上げてきて、突然ある出来事が起きてからのドーン!

あれを計画していた側がどんな気持ち(願い)を持っていたのか、
なぜ移民の少年がこの映画のキーパーソンとして登場してきたのか、

あのラストドーンでなるほどと膝を打ちますね。

**

かなり寓話っぽい雰囲気ですけどあくまでも現代だし
現実と同じように歴史を積み上げられてきた世界。

戦争も紛争も差別もバリバリ起きている。
この映画では一切出てこないけど。
すぐ外ではガンガン行われてる。

だからこそ人類の、大発明である、アレを。
ラストでドーン!!と。