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岸辺露伴 ルーヴルへ行くのTKEのネタバレレビュー・内容・結末

岸辺露伴 ルーヴルへ行く(2023年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

「ジョジョの奇妙な冒険 第4部 ダイヤモンドは砕けない」にて登場した漫画家「岸辺露伴」を主役としたスピンオフ漫画の映画化。

この作品の前に同キャラクタのスピンオフ漫画、小説がアニメ・実写ドラマで展開されており、今作はドラマ版からの地続きとなる位置づけのようです。

ジャンルとしてはサスペンスホラーなのかな?
個人的にはジョジョ好きなので非常に楽しめましたが、岸辺露伴を知らない、そもそもジョジョを知らない…という方はなかなか分かりづらいところは多く、満足に楽しめないです。

原作の漫画は直近で愛蔵版が発売されたので、読んでから観賞するとより楽しめると思います。


以下、ネタバレあります。

漫画家の岸辺露伴はあるオークションで「漆黒の絵」が出品されることを知り、編集者の泉京香と共に競り落とす。
帰宅後、オークションで競り合った男に絵を強奪されるも取り替えすと、絵の裏に「この絵はルーヴルで見た黒」と書かれた作者のメッセージを見つける。

露伴は漫画家としてデビューする前に下宿していた祖母の旅館での奈々瀬という女性との出会いと別れを思い出す。
露伴は彼女が言っていた「この世で最も黒くて邪悪な絵」を探していたのだ。

目的の絵がルーヴル美術館にあると考えた露伴は泉とともにフランスへと旅立つのだった。


結論から言うと、この黒い絵を見ると過去の罪(本人のみならず先祖が犯した罪も含む)によって殺されてしまう…ということなのですが、漫画版では容赦なく理不尽だったのに対し、今作ではある程度救いのある展開となっています。

それが物足りなさを感じる部分でもあるのですが、ここはターゲット層や今後の展開を考えての改変だったのかな、と思いました。


また、漫画版と大きく違うことは登場人物の増加、特に編集者である泉京香の存在です。
本来はジョジョの他キャラが言うセリフを彼女が発言したり、狂言回し的な立ち位置で観客側に露伴を介して映画内のギミックを説明してくれます。

この京香という裏表のない一般人の登場により、漫画版のドロドロとした後味の悪い展開を和らげてくれています。

他の登場人物は尺を伸ばすために追加されたと思うのですが、漫画版ではやや説明不足に感じた部分の補正や整合性を取るためにも違和感なく溶け込んでおり、監督らの原作に対する理解度とリスペクトを感じました。

そして、黒い絵の作者である「山村仁左右衛門」のエピソードが後半の大部分を締めています。
漫画では文字のみのエピローグで語られてしまった部分ですが、長尺で映像化してくれたのは個人的には感激でした。


ただ、全体的にはやはり冗長な印象はあり、もう少し精査しても良かったんじゃないかな?とは思います。
雰囲気もありますし、特にルーヴル美術館内の散策は映像としても綺麗で良かったのですが、やはり追加で挿入された人物やエピソードに無駄が多いように感じました。
ただの怪奇現象だとボリューム不足だったからサスペンス要素を足したかったのかな?

結局ルーヴル美術館に絵を持ちこんだ彼はいったい何者だったんだ…。


また、個人的に残念だったのは、やはり露伴のスタンドである「ヘヴンズ・ドアー」が映像として出てこなかったこと。

ここはドラマ版からの派生ということも踏まえれば、変にCG使って表現するよりは…というのも分かるのですが、個人的にはやはり出て欲しかった…いや、全然作風に合ってないことは理解してるのでわがままな願望なのですけど。


あと、全体的に展開と演出が地味です。
そもそも派手なアクションをしたりという作品ではないので仕方がないのですが、そのせいか「2時間ドラマでいいな…」という印象を感じる人はいると思います。
黒い絵を見ると過去の幻覚に襲われるのですが、基本的には一人芝居でアタフタしてるので傍から見たらメチャクチャ滑稽に見えます。

漫画では幻に関しては絵を目撃した人すべてが認識しているようでしたし、死に方も相当にエグかったのですが、そこはドラマ仕様の限界があったのかな…直接的に攻撃されるシーン(撃たれる、轢かれる等)は巧妙に見えないように撮影されており、そこだけ不自然に見えてしまったのが残念でした。


ジョジョという作品が好き!高橋一生のドラマ版が好き!という方は総じて楽しめると思います。自分もそうなので多少得点は甘めです。
ただ、ホラー好き、サスペンス好きの人と一緒に見よう!となると話は別で、下手したら喧嘩になる可能性もありますのでご注意下さい。
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