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風の谷のナウシカのTaiRaのレビュー・感想・評価

風の谷のナウシカ(1984年製作の映画)
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漫画版読んでから初めて観直したけど、やっぱ映画版は印象薄い。昔からあんま記憶に残らない作品だった。

宮崎駿の最高傑作は何かと言ったら、そりゃ漫画版『風の谷のナウシカ』でしょう?それを踏まえると映画版『風の谷のナウシカ』ってそれ程の作品ではないと思うんですよ。壮大な物語の序盤をダイジェストにして単純化した作品、くらいにしか思えない。確かに素晴らしい場面はたくさんありますよ。メーヴェで飛び立つ瞬間なんてのは全て良い。全てね。人が空を飛ぶ事に関しては本当に美しく描く。あと久石譲の音楽はやっぱ良い。この辺りの絵の動きや音に関しては純粋に楽しめる。漫画では扱えない分野だから。物語の構成や人物の描き込み、テーマの複雑さは比較出来てしまうからね。『風の谷のナウシカ』として優れてるのはどちらかって。腐海の意味の反転のさせ方とか凄いですからね、漫画版。映画ラストの非常に神話的な、ハッキリ言ってキリスト化するナウシカっていうのも単純化し過ぎたかな。コンテでは王蟲の暴走がナウシカによってすんなり止まっていたのを、プロデューサーの高畑勲が現状の展開に変えさせたと言う事らしいが。確かに映画としてはそっちの方が正しいですよ。ショッキングな描写もあり分かりやすい。ただ、ここで伝説は本当だった、と言って唐突に終わられてもな。そもそもの話だけど。こないだ観直した『マトリックス』もそうだったけど、「救世主はホントにいた!」ってだけで話全然終わってないんだよね。話がいよいよ始まるかと思ったら終わる感じ。不思議な映画だと思いますよ、そういう意味では。

高畑勲が「プロデューサーとしては満足。友人として言えば30点の出来」と発言して宮崎駿が怒ったそうだけど、以降の作品、特に漫画版ナウシカの充実度なんか見ると、この発言は重要かもしれないね。
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