【風を読み虫と戯る】
スタジオジブリ・宮崎駿監督の代表作である1984年のアニメーション作品
〈あらすじ〉
海から吹く風によって腐海の毒から守られている「風の谷」。ある日、虫に襲われた輸送飛行船が風の谷に墜落する。船内には、「火の七日間」と呼ばれる最終戦争で地球を壊滅させた「巨神兵」の核が積まれていた。やがて巨神兵をめぐる闘争が勃発し、風の谷の王妃ナウシカも陰謀渦巻く戦乱に巻き込まれる…。
〈所感〉
金ローで何度見ても上の空だったシリーズ2作目。ラピュタと紅の豚も昔からCMを挟むと、脳内を右から左へとすり抜けていく作品でした。それくらい子供には難解に思えた。でも今いい歳になった今レンタルDVDにてちゃんと本作に向き合ってみると、とにかくこの圧倒的世界観にこの勇気も知性も慈愛も経験も兼ね備えた最強ヒロインとあって名作たる所以が多少わかった。大人でも子供に完全な正解を提示できないようなディストピアにおいて、谷を守り、そこに住む人を守り、王蟲達ひいては母なる大自然を守ろうとするナウシカの行動力には脱帽しかない。自然あっての我々人間。当たり前でしかないことだが、こういう時代のこういう状況において、自分だったらどこまでそんな綺麗事を言い続けられるか、考えてしまう。やはり、身の振り方に限界はあると思う。でも、できるだけナウシカのような自由で頑強な心の持ち主でありたいと思う。鳥山明や冨樫義博をはじめ多くの創作作家に大いに影響を与えていそうなのも納得の生物のデザイン。クラピカは王蟲がモデルってヨークシン編あたりのコミックに書いて、どういうこと!?って思ってたが、同胞のために目を赤くし、命を懸ける姿が確かに瓜二つである。虫って原始的なフォルムでありながら完成形のようで美しい。一番感じるのはそれ。明日の人類への警鐘とも読み取れ、他のジブリに比べるとちょっと説教がましい向きもあるのかもしれないが、どんな時代にも通じる普遍的なメッセージを携えている素晴らしいファンタジー作品だと思う。本作が無ければ色々な創作物が生まれなかったのでは?と思うくらいアイデアの源泉である。