ワンコ

ザ・キラーのワンコのレビュー・感想・評価

ザ・キラー(2023年製作の映画)
5.0
【資本主義的キラー】

予測し、即興はなし、確実に実行する。

観る側に、序盤の「なぜ」と最後の「なぜ」を交錯させる面白い作品だった。

上質な娯楽作品だと思う。

序盤の「なぜ」は、こんなに慎重なのにということだ。

(以下ネタバレ)

ここからストーリーは急展開するが、冷徹さのなかに垣間見られる、この「ザ・キラー」の人間味は、実は、暗唱しているように繰り返す、前段の言葉に表されているのではないのか。

一見、冷静さを表現しているように思えるが、実は、そうではなく、常に何処かで感情を揺さぶられる可能性を秘めた存在として描かれているのだ。
象徴的なのはドミニカの隠れ家での事件の後の行動だ。
自分のためなのか、或いは、隠れ家を守る女性が襲撃されたことへの復讐なのか。

そして、パリ、ドミニカ、ニューオリンズ、フロリダ、ニューヨーク、シカゴと移動する中で、復讐を冷徹に実行していくが、大元の依頼主は亡き者にはしない。

競合相手や、これを助けたり、協力するものは容赦しないが、雇用主やスポンサーに対しては極力手を下さないのだ。

これは資本主義のロジックに通ずる。

あくまでもビジネスなのだ。

ずっと目が離せなくて面白い作品だった。
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