デヴィッド・フィンチャー監督が、「セブン」の脚本家アンドリュー・ケヴィン・ウォーカーと再びタッグを組んだとあれば、そりゃもう面白いの確定かと喜び勇んで観たのに…。
その男(マイケル・ファスペンダー)は殺し屋。廃墟と化したビルの一室で、向かいのホテルの一室の様子を窺いながら、ターゲットを仕留める瞬間をただ静かに待っていた—— 。
そう、ただ静かに。
いや、ちょっと待て。
心の中では随分とお喋りだ。
"計画通りにやれ
予測しろ 即興はよせ
誰も信じるな
やるべきことを確実にこなす
もし成功したければ
単純だ"
殺しの流儀、殺しの哲学、自分の腕がどれ程に確かなものか、自分語りが止まらない。
成功するかに見えた簡単な仕事。それをこの男はターゲットを仕留め損ね、ジタバタと焦り始める。
最初のミスがあまりにお粗末。素人目で見ても、標的と弾道との間に障害(この場合はSM嬢)があるなら、撃つべきタイミングは今じゃないだろ。
成功率10割と豪語する彼のミスがあまりに酷くて、その後の物語の説得力を欠くのが最大の難点。いや、寧ろ狙っているのか?コメディなのか?
暗くスタイリッシュな映像。醸し出されるハードボイルドな雰囲気。それらは男の過剰な自分語りで滑稽なナルシシズムへと転じて、シュールな味わいさえある。
ティルダ様が出ていて、少しテンションが上がったぐらいで、心の振り子は振り切れる事なく淡々と進み、終わった。
何だったんだこれは。