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ザ・キラーのごnのレビュー・感想・評価

ザ・キラー(2023年製作の映画)
3.6
うん、フィンチャーだね、な、感じで、そこは期待通り。
全方位「ソリッド」。
映像・音楽は相変わらずセンス抜群。
若干、モノローグ満載がうるさい(もっと黙ってても成立したかも)けども、ストーリーも緻密でソリッドな造りで。
マイケル・ファスベンダーさまは相変わらずかっこよく、ティルダ・スウィントンさまの効かせっぷりもかっこいい。

もっとヒリヒリするものを期待したけども、全然、そんなことはなく、良い意味でサクサク淡々としていて、途中でトイレ行けるぐらいの緊張感。

数少ないうちの1人ではなく、数あるうちの1人。
所詮、稼業で。何を生業にするか、だけ。
どしてその生業から離れられないのか、は、ティルダさまが熊と狩人の例え話で説明している。

生業も、いい年になってくると、ルーティンに落としたいわけじゃないが思考しなくてもいいぐらい体が覚えてしまってルーティンに落ちるし、手も速くなる。
経験値から結果を知ってしまっているからこそ、気づけば目的ではなく過程だけに日々終始してしまう感も出てくる。
それをもってプロと言われればプロだけど、俯瞰でみれば歯磨き同然に当たり前の話、の、ゾーンに入ってしまう。
褒められても本人は実につまらんくなっていることもあり、そんな中で、たまに、違うこと起こると、うろたえてる自分にイライラしつつ、久々に予測できない結果と目指すべきゴールに照準を合わせることに、腕まくりしてしまってる自分に気づくこともある。

休み欲しいといっておいて、休みになるとなんもできない人とか。
安定したいといいながら、不安定なドキドキがないとテンションあがらない人とか。
自分のシナリオどおりにことが運んでいるうちは優秀なのに、ちょっとイレギュラーが起こると思考停止したりキレて暴走する人とか。

そんなこんなは、そこらじゅうにいるわな、という。

それを、殺し屋というあたかも特殊は稼業(でもさりとてただの稼業)をモチーフに語ってくれたのかなー、と。

わしの稼業とは、生業とは、なんじゃかんじゃいってなぜこの生活から離れないのか、なんてことに、ブランデーあおって(飲めないけど)葉巻ふかしながら(吸わないけど)思いを巡らすための、心地よいBGMのような映画でした。
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