Kentaro

ザ・キラーのKentaroのレビュー・感想・評価

ザ・キラー(2023年製作の映画)
3.6
凄腕の殺し屋ぽいのにしょーもない失敗するし報復のこと予測できないし腕はあるけど頭が足りない殺し屋ってこと?

解説読んだらワーカホリックの話だったのか。本来のテーマは窓に映ったwe work、働く私たち。カッコよく仕事の哲学を語るもあっけなく失敗。家庭にも影響が出て、上司と同業者と顧客に八つ当たり。自己肯定感をこれ以上傷つけないように想定通りと言い聞かせながら、やってはいけないことをやる時も、失敗した時も都合よく言い訳して自己保身。長く仕事を続け、一流になったような自己陶酔に浸っていると、一度の失敗であっけなく社会から排除され、代えが効くことを突きつけられて自尊心がズタボロでパニックになる。恋人のためとかこつけてほんとは自分のために恥かかされたやつに復讐したい。私がいなきゃ回らないと思いたい、でもあなたはコマのひとり。そして労働者は富裕層には勝てない。自宅に侵入し、やろうと思えばできるけどやらないとクライアントに言っているようでリスクを考え思うままに行動できない自分に言い訳して、家庭に戻ってくる。

この資本主義システムの中で本当の意味では自己実現は果たせない、なぜなら能力で評価されそれは代替可能だから。あなたの唯一性は家庭(もしくは友人関係)によって担保される。主人公も、家庭のために熊を狩っていたはずが、いつの間にか社会での自己実現という幻想のために熊に犯されに行くようになっていたことに気づく。

映画ではかっこいい理想を観たいのに、現実(自分)を観させられるから評価が低いのか。
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