Ren

超人ハルクのRenのレビュー・感想・評価

超人ハルク(1977年製作の映画)
2.5
今でこそMCUでお馴染みだけど、ハルクの実写映画はこちらが元祖らしい。もちろん現代のブロックバスター的な盛り上がりを期待してはいけないけど、これはこれで、という味わいがあった。

94分と限られた上映時間の中でハルクに変身するまでに30分かかり、あらすじにある新聞記者との駆け引きバトルはラスト30分から始まるヘンなバランス。ヒーローアクション映画として観たら歪だけど、今作の主軸は怪力アクションでも巨悪を倒すことでも無いのはすぐに分かる。

喪失感に苛まれる中年の哀愁。力を得たかった、得てしまった男の焦燥と葛藤と悲壮に焦点を当てたミニマルなドラマだ。ハルク化はそのドラマのための装置。
自分と記憶の乖離したハルクという人格が何かを破壊し続けることが、バナー博士の孤独感を高めていく。力が強いばかりに独りになっていく哀しき怪物の成分だけを掬い取ったビターな物語だった。アメコミ映画にはなかなか無い後味。

そこまで救いは無い。それでも人生は、自分自身を乗りこなして喪失から再生していかなければならない、という余韻だけを残して終わる。やはりSFの力を借りた中年の哀愁の人間ドラマでファイナルアンサーでいいと思う。

ハルクが緑の塗料を塗ったマッチョだったりアクションが全部スローモーションだったりするのはとてもイジられそうだけどご愛嬌ということにしたい。時代を感じる。
MCUに疲れた方はぜひ。
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