このレビューはネタバレを含みます
映画界のフェミニストのパイオニアであり、アメリカ屈指のインディペンデント映画監督と言われるニナ・メンケス(Nina Menkes)の代表作。
長年彼女の作品に出演しているという妹のティンカ・メンケスを主演に、ラスベガスのカジノでブラックジャック・ディーラーをしている女性フィルダウスの日常を淡々と捉えた作品。
タイトルであるトランプのダイヤのクイーン(Queen of Diamonds)が黒い空間に回転するオープニングから、ベッドで寝ている彼女の真紅の長いフェイクネイルを捉えるカメラ。
一転、客の来ないブラックジャックのテーブルで無表情で腕を組んで立つ彼女の姿。
白すぎるファンデーション、カーリーなロングヘア、長いネールにハイヒール姿でほぼ無表情で必要最低限の発話しかしない彼女。
(Dead or Aliveのピート・バーンズに似てる?)
昼は寝たきりの老人の部屋を訪ね世話をしたり、歩道のベンチで男に声かけられ無視したり、親友の黒人女性とだらだら過ごしたり、少年たちにバッグ(財布)を盗まれたり、海を眺めていて声をかけられた男と燃える1本の木を見続けたり(このシーンが印象的)…
夜のカジノでの彼女。数人の客を相手にカードシューからカードを出し、回収し、ドル札がたまるとスリットに押し込む…という動作を淡々と続ける姿を捉えるシーンが長々と続く。
長い間帰って来てない夫の捜査願いを出そうとしてやめたり(笑)、ダンスクラブで踊ったオッチャンをフッたり・・・
そして、アパートの隣人のDV男とその彼女の結婚式に出席する。
『WANDA(1970)』や『ジャンヌ・ディエルマン(1975)』の系譜を感じますが、虚無に見える本作の主人公フィルダウスが淡々と送る日々は、支配や搾取を回避しているようにも見える(その堂々たる立ち姿も)。
これぞインディペンデントという作風、稀有ですね。
ジョージ・ルーカスFoundationの資金サポートで、Academy Film Archiveにより2018年にレストアされたものが、Vimeoオンデマンド(有料レンタル)で見れます。
https://vimeo.com/ondemand/queenofdiamonds