ウルトラキャラメルコーン

バニシング・ポイント 4Kデジタルリマスター版のウルトラキャラメルコーンのレビュー・感想・評価

3.8
アメリカンニューシネマに位置付けられる、有名な一本。カーチェイスの元祖としても堪能出来ました!

5年以上前にレンタルDVDで鑑賞しただけだったので、今回の上映は嬉しかったです。

改めて観ると、余白の多い作品だと思いました。
本筋は、生きる気力を失った退役軍人の主人公の自害とみました。

ゴジラのテーマとも被るかもしれないが、主人公コワルスキーからすれば「こんな国を守るために命をかけて戦ったのか?」という悲しさ。これがニヒルな態度に出ているのだろう。冷笑性は一貫して示されている。ゲイカップルを逆上させた笑みである。つまり俗世を俯瞰してしまっているのではないか。

職権乱用して女の子をレイプしようとする警察。偽りと見える愛と称して集会を開くヒッピー。このようなアメリカを守るつもりで戦争に行ったわけではない。最愛の女性は死んでいる。

コワルスキーはそんな世の中の違和感に対して「そうではないだろう」という象徴のなっていた。クリスチャンの盲目黒人DJが応援したのも、彼に正義を見たのだろう。
すでに俗世に背を向け聖なる存在に近づいているコワルスキーに対して、神に仕えて盲目であるからこそ誰よりもコワルスキーの存在を感じたのだと思う。


ヘビを集めたおじさんのシークエンス。
悪魔の象徴のヘビをせっかく集めたのに、愛を叫ぶヒッピーたちにヘビが野に放たれる。
コワルスキーからすれば、悪を放置するような背を向けたくなる世相になってしまった。

クスリを勧められても必要以上に貰わない。可愛い女性から誘惑されても動じない。つまり欲がなくなってしまっている。

どこか死を求めてたからレーサーになったのだろう。レーサーで事故ってるシーンも挟まれる。


クルマを飛ばすキッカケとなった賭け。賭けた友達と電話をして、負けが確定する。

コワルスキー本人も、このわずかな正義感違和感を賭けていたのだろう。

一縷の希望を警察という既得権益から逃れられずに潰されるという王道ニューシネマとなっている。

まさに消失してしまうポイント、バニシングポイントだと思いました。

劇場で見直せて大満足でしたー