ウルトラキャラメルコーン

枯れ葉のウルトラキャラメルコーンのレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
4.3
【チャップリンと歩いてく】
去年見損ねた映画でした。
アキカウリスマキのファンでしたが、監督作は劇場で初鑑賞。
引退していたと思ったきりでリサーチ不足で本作の鑑賞が漏れていました。いやー、映画館で見れて幸せ。好きなので感想ダダ洩れ状態になります。

小津安二郎よろしく、棒読みセリフだが音楽や画でストーリーや感情を切り取っていく手法は映画独特の余韻を生むと思う。
初期の北野武作品やヴィムヴェンダースもそうだが、説明ゼリフないが故の深い余韻が残る映画を見ると「映画観たなぁー」と感じる。

本作は、賞味期限切れの商品を持ち帰ったことによりスーパーをクビになる女性、アルコール中毒で工場をクビになる男性、殺処分前に助けられたわんちゃんなど、消費社会で「使えない」とされてしまった人たちのお話。
印象的で随所に出てくるロシア・ウクライナの戦争ニュース。市場経済・資本主義に由来する弊害としての戦争をリアリティを持ち合わせつつ恋愛に挟んでいく。

流れてくる歌が登場人物の感情を表しているが、相変わらず渋い曲チョイス。映画内映画としてデートで見てた映画がジムジャームッシュのわりと最近の映画【Dead don't die】ですごい嬉しくなった。あんな大勢のゾンビに勝てるわけないとか、こんな面白い映画みたことなかったとか言ってくれる感想や、映画の気取らないながらも絶妙なチョイスが、好き・嬉しーってなる。

可愛いわんちゃんに「電話出て」などのギャグとか良かったなぁ。
一回デートしただけなのに結婚しかけた女とか言ってるやつの滑稽さ・純粋さとかのいちいちセンスが良い。

Filmarksにたくさんいらっしゃる審美眼の持ち主の方々の知見で知ったが、ラストカットがチャップリンのモダンタイムスのオマージュ!
気づきませんでした、勉強不足!!

これで全てがしっくりきました。モダンタイムスで描いている世間の歯車になることでの人間性の喪失。この喪失は2024年現在も変わることなく戦争は起きているし世間から爪弾きされる人がいる。
こんな糞みたいな世界でも幸せを見つけて歩いていくことが人間なのだというメッセージ。セリフで全く言っていないが本作観た人全てに伝わっていると思う。客観的な演出でありながらも優しい視点に触れることができる、観ると幸せになれる映画。