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毒戦 BELIEVER 2のmaverickのレビュー・感想・評価

毒戦 BELIEVER 2(2023年製作の映画)
4.3
前作以降、約5年ぶりの続編。2023年11月17日よりNetflixにて公開が開始された。監督は『ビューティー・インサイド』のペク・ジョンヨル。


前作の中間の話を描くミッドクエル形式の作品であり、これによりさらに世界観が深掘りされた。不穏な空気感はそのままに、ド派手な銃撃戦を多数盛り込むことで前作からのさらなる昇華が図られている。韓国映画らしい非常に野心的な作品性であり、芸術性をも感じさせる作りは見事。Netflixとのコラボにより、新たな韓国ノワール作品がまたひとつ誕生した。

前作もそうであったが、とにかく演者の熱量が凄まじい。登場人物はどいつもこいつもイカレた奴ばかり。そうしたキャラクターを見事なまでに表現していて驚きである。本作での一番のインパクトは、新キャラとして登場のハン・ヒョジュであろう。事前に知らなければ絶対に彼女だと分からないくらいの豹変ぶり。イカレた顔つきにはぞっとさせられる。中国語を操り、アスリートのような引き締まった体付きも披露する。もはや別人で、あの可愛らしい彼女はどこへやら。これぞ女優魂だと圧倒させられた。前作同様にチャ・スンウォンの怪演も光る。彼が演じるブライアンには右腕的な存在の女性戦闘員がいて、その役を演じたソ・ハジョンという女優も印象的だった。

キャストの中でひとつ残念だったのは、キーマンであるラクを演じたリュ・ジュンヨルが本作には出演していないこと。これがかなり痛かった。スケジュールの都合で参加出来なかったとのこと。仕方ないとはいえ、彼がいないのではだいぶ印象が違う。本作では代役を『被告人』のオ・スンフンが演じていた。彼の演技が悪いわけじゃない。演技そのものは申し分ないが、どうしても前作のリュ・ジュンヨルがちらついてしまうのだ。キャストの変更さえなければ、本作の評価はもっと上がっていた。それだけに残念である。

アクションシーンは大迫力で、激しい銃撃戦が盛沢山で大興奮だった。韓国映画といえば鈍器での殴り合いなんだけど、本作はスタイリッシュな銃撃戦が繰り広げられる。ハンドガンで鮮やかに一人ずつ始末したり、ライフルで一気に殲滅したり、スナイプシーンやらレーザーサイトを使用しての突入の演出やらで見せ方も多彩で楽しませる。肉弾戦が強いハン・ヒョジュのインパクトも強烈だった。暴力描写が容赦ないのもさすがだ。バーナーのシーンは思わず目を背けたくなった。エグイけど、そこに圧倒させられてしまうのよね。

物語は、イ先生を巡る争い。ラストを迎えて、悲しい話だなと思った。それに執着しなければ、幸せな人生があっただろうにね。


韓国映画で続編ってそもそも珍しいのだが、その上でミッドクエル形式という特殊な作品性。だが前作の良さを損なうことなく、さらに昇華させた手腕は素晴らしい。作り手の熱意に溢れており、それはエンドロールにも表れていた。激しい暴力描写の中にも美しさがある。これぞ韓国ノワールな良作であった。
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