秀ポン

スペースマンの秀ポンのレビュー・感想・評価

スペースマン(2024年製作の映画)
1.2
「分かりやすいエンタメはやる気ないんで、シュールでやってるんで」ってツラしながら普通にスベってるのが痛々しかった。

蜘蛛がどこから船内に入ったのかを全く気にしない点とか、謎の粒子を採取しに行くミッションのはずなのに、船内に入ったまさにその粒子を、その場にあった間に合わせの容器で採取する点とか、物語の現実的な部分の描き方が粗雑。
そこら辺の適当さから、「この映画のSF要素は、科学というよりは思弁寄りなんだな」と察するんだけど、肝心の思弁がうっっっっっっっっっっっすい。

終盤、妻と電話越しの会話だけで和解してるのがかなり意味不明だった。まさにその、言葉だけで寄り添おうとしないことが問題だったんだろ?
心を入れ替えたというだけでなぜだか全てが解決している。行動のレベルでは主人公はまだ何もしていないのに。
この辺の、精神に偏重し行動を軽視するスタンスは、蜘蛛がどうやって入ったのかや、粒子とは具体的に何なのか等、物理的な問題を軽視する映画全体のスタンスと重なっている。
(こんな茶番を真面目に見られる人間なんているのか?)

その後の宇宙を漂う主人公の悟ったような穏やかな表情にもムカつく。
成し遂げたみたいな感じでふわふわ浮かんでるけど、この映画だいぶつまんないですよ。

そしてラスト、タイトルが出てきたところで失笑した。
『ゼログラビティ』を筆頭に、ラストにタイトルが出てくるタイプの締め方って、もちろんかっこいいんだけど、そこはかとないドヤ感も漂っている。
そこまでの流れで観客のテンションを上げさせて初めてビシッと決まるのであって、スベり散らかした状態でタイトルを出されると本当に見てられない。

しかしこのラストシーンでは、失笑するのと同時に、おめでとうって感じの奇妙な気持ちにもなった。
ラストカットにタイトルが出ることで、この映画がクソ映画として完成した感じがした。
ずっと、こっちは置いてけぼりで、それっぽいだけの思弁を垂れ流すことで監督が1人で勝手に気持ち良くなっているように感じていたんだけど、タイトルを出した瞬間に監督が絶頂したのがはっきり分かった。

これまで、わざわざクソ映画をありがたがって見る人の気がしれないと思っていたけど、彼らはもしかしたら今回自分が感じたような、監督のオナニーとその果ての絶頂に対する「おめでとう感」を楽しんでいるのかもしれない。
不思議な感覚だったし、クセになるのもちょっと分かる気がする。

──その他、細かな感想。

・字幕も酷かった。超光速がなぜか超音速って訳されている。SFでこのミスは無しだろ。

・人間と蜘蛛型異星人の交流って絵面から、当初は「○○○みたいだな」と思ったけど、全然違ってた。
あっちの方の映画化は本当に頑張ってほしい。間違ってもこんな風にはならないでほしい。この映画を見たせいで怖くなった。

・おめでとうというか、よっしゃ完成した!!!というか。いずれにせよいい趣味ではない。
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