秀ポン

ブルー きみは大丈夫の秀ポンのレビュー・感想・評価

ブルー きみは大丈夫(2024年製作の映画)
2.8
試写会で見た。

つまらなかった。

子供の頃の遊び相手とのお別れって話はピクサーが既に傑作を複数出している。トイストーリー3,4や、インサイド・ヘッドのあの象のくだりなど。
今作では「そもそもお別れする必要あるの?」って形でテーマの着地点を捻っていて、そこに過去の傑作群とは違う独自性がある。そして、その結論にはかなり良いこと言ってるなと思えた。
なんだけど、独自性とかテーマに対する共感とかを抜いた単純な完成度の面で見たときに、過去の傑作群に追いつけてないというしんどさはずっと感じた。ぶっちゃけ退屈だった。

そう感じた理由にはテンポが悪いとかもあるんだけど、一番大きいのはルールの扱いだ。
IF達の消えるルールがフワフワしてるから、彼らの必死さを感じられず、主人公達が取り組むお見合いに対しても「どうでも良くね?」と思っちゃう。
あのクマとかめっちゃ長いこと生きながらえてんじゃん。ほっといても大丈夫なんじゃねーの?
仮にルールを厳密にして、IF達の消えたくないという焦燥感がリアルになってしまったらエグくて見てられなくなるんだろうけど、じゃあエグくならないようなルール設定を考えてほしい。

ルールに対する意識の低さが極まるのがポストクレジットシーンだ。
IF達がかつての子供達と再会していくんだが、ここではもう完全にルールが破棄されてぐずぐずになっていた。

本編中では、かつての子供達はIFのことをもう認識することができなくて、だから見えるようにする為に、彼らにかつてIFのことが見えていた頃の気持ちを思い出させる工程が必要だった。
なのにこのポストクレジットシーンでは、かつての子供達がIF達を見ることでかつての気持ちを思い出して元気付けられるってプロセスになってて、順序が逆転している。
こういうの、IFのルールとかどうでも良かったん?ってなって本当に萎える。

クワイエットプレイスで「音を立てたら死ぬ」という独自のルールの支配する世界と、そのルールが生み出すドラマを描いたクラシンスキー監督なのに、こんなにルールがぐずぐずになることあるの?と失望した。

物語の焦点は最終的にIF達から主人公に移る。主人公は現実に立ち向かうために物語を語る。
IF達のために働くっていう物語は彼女のための物語だったんだっていう展開。
想像によって自分を癒し、勇気付ける姿は彼女がIFを取り戻させてきた大人達の姿と重なる。
んだけど、最終的に描きたいその部分に対する前振りとしてのIFお見合い作戦の扱いが適当じゃないか?「あくまで前振りなんで」って程度の本気度でやってないか?という話をしている。

ラスト、主人公の昔描いていた絵の全貌が明らかになったとき、それが精神を病んだ子供の描く絵みたいでクソ面白かった。
家族の絵に知らねーピエロが混ざってんの怖すぎるだろ。
それくらい。

──その他、細かな感想。

・IFの中で一番好きなのはコスモ。

・ブルーって邦題は完全にどうかしてる。「ポケットモンスター」を「カビゴン」に改題するようなもんだろこれ。
秀ポン

秀ポン