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アーリーマン〜ダグと仲間のキックオフ!〜の秀ポンのレビュー・感想・評価

3.0
冒頭の、主人公達の先祖によるサッカーの起源の描き方が良かった。燃える隕石をアチチって反射で蹴っ飛ばす感じから、次第に楽しくなっていく過程が愉快で良い。
偶発的な面白い出来事が徐々に遊びになっていく感じ、自分にもあったなぁって思った。

一方で現在の主人公達の方は、せっかくサッカーっていう未知の文化と出会ったのに、それにのめり込む感じは無く、どっちかっていうと生活を人質に取られて仕方なくやらされてる感があって、それが残念だった。
「試合に勝てなければ故郷に帰れず、一生炭鉱暮らし」っていう、サッカーをせざるを得ない外的な要因だけが用意されていて、彼らのサッカーに対する内的な動機が欠けている。
サッカーが楽しい、みたいなポジティブな気持ちにしろ、憎い相手を打ち負かしたい、みたいなネガティブな気持ちにしろ、能動的にやってくれないとこっちも盛り上がりづらい。

スパルタコーチにしごかれて悲鳴をあげる、みたいなよくある(そして自分が好きな)展開も、根っこの部分で彼らのサッカーへの興味を感じないので、そんなに盛り上がれない。

最後の決戦も、みんな急に楽しそうにサッカーしてたけど、いつからそのスタンスになったの?って感じでモヤついた。

「自分達の部族は昔からサッカーの弱い部族だったんだ。自分達は負け組だったんだ」
「いやそんなことはない!過去は過去で、今の自分達には関係ない!」
みたいな熱い展開も空回りして見える。

なんかいまいち自分が何に引っ掛かってるのかはっきりしないけど、要はこの主人公達、「やっぱりじゃんけんで勝敗を決めようぜ」って言われたら、一も二もなくOK!って言い出しそうな感じがして嫌だった。

でもアニメーションは楽しいし、愉快なシーンもいっぱいあった。

──その他、細かな感想。

・荒れた地球に唯一存在する楽園だと思っていた主人公達の世界が、実はローカルなものでしか無かったって展開はワクワクした。

・モノマネで女王からの伝言を伝える伝言バードがめっちゃ面白かった。
ドラマの『シャーロック』でも感じたけど、やっぱり使者って面白い。目の前のやつが喋っているんだが、その言葉はそいつのものではないっていう状況がなんか面白い。

・レアル・マドリード、ハーランド、FIFA、マンユナイテッド等、目配せ的なネタが多くて楽しかった。

・現状、サッカー映画で一番好きなのは
『コッホ先生と僕らの革命』
スポーツ映画で一番好きなのは
『シンクオアスイム』
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