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レプタイル -蜥蜴-のワンコのレビュー・感想・評価

レプタイル -蜥蜴-(2023年製作の映画)
4.2
【アメリカの断面】

※Netflix作品。アメリカでは劇場公開にもなったらしい。

示唆もあって、思いがけず面白い作品だった。

この「レプタイル-蜥蜴」の舞台となったスカボローはメイン州の人口2万人足らずの小さな町だ。住民の90%以上が白人で、高齢化が進み、大きな産業は見当たらない。

メイン州はアメリカ東部海岸で最も北に位置し、観光や漁業が主な産業だが、連携する大きな大学組織などなく、現在のアメリカ経済を牽引するIT産業などのベースもない。

2000年代のリーマンショック前までの不動産バブルの後は、他の地域がIT産業に牽引されて、不動産も盛り返したのに対し、この地域は景気の回復は著しく遅れている。

コロナでリモートワークが当たり前になっても、住む街としての活気や利便性などに乏しく、内向きな街の気質は、他所者には不向きだ。

こうした背景の中で起きる事件。

癒着などアメリカ警察組織をモチーフにしたよくあるストーリーのようにも思えるが、もう一つのアメリカの暗い面、つまり、経済的な分断と、発展から取り残された地域が存在し、そこには未来が見えず、内向きになる一方なのだということを示唆しているように思える。

メイン州の南に位置するマサチューセッツ州は大都市ボストンを抱え、多くの優秀な大学があって、先進的な企業が人材を求めて集まり、住民自治も充実している。
そして、不動産価格も回復し高止まりだ。

こうした明暗をアメリカ社会は抱え、人知れず苦悩しているものがいるのだ。

デル・トロ演じるトムは、そんな苦悩する地方の小さな町のメタファーなのだろう。
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