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モンキーマンの教授のレビュー・感想・評価

モンキーマン(2024年製作の映画)
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俳優デブ・パテルの監督デビュー作で脚本やプロデューサーも兼任。加えてジョーダン・ピールも名を連ね「ジョン・ウィック」のアクションチームも参加、という話題性(?)から、良くも悪くも察した通りの作品…という印象。

ストーリーやアクションシーンに関しては、既視感を感じる面が多い。
キッド(デブ・パテル)の人物像はあまり掘り下げられず、終盤までラナ署長(シカンダル・ケール)への妄執は明かされない為(明かされた後も特に驚きはなく察しのつく展開)、ストーリーの推進力の弱さや、説明不足が目立つ。

特にアルフォンソ(ピトバッシュ)はキャラクター自体は「いいキャラしてる」なのに、基本的には主人公に騙され、仕事も失い、逃亡中という不遇に遭っているのにも関わらずキッドを支持しているのは謎。

また直接的な「敵」がラナとしてほぼほぼ描かれている中で、黒幕がシャクティ(マカランド・デシュパンデ)として浮上しても(そうなるのは分かっていたが…)、そこに割かれるエピソードがないので、飲み込むしかなく高揚感が削がれる。

色々とストーリー上では整合性がなく、未熟な印象は全体にあるのだが、ほぼほぼデブ・パテル自身の撮りたい映画を、がむしゃらに撮っている熱情が良い意味で純粋に発揮されている印象はあるので、その点は心地よい。
そして、彼を動かしているのは、それこそ「ジョン・ウィック」に影響を受け、確信して完成に漕ぎつけた努力というのが、画面から伝わる点は感動できる。

舞台となるインドでは公開できない状態らしいが、暗にモディ現政権の「ヒンズー至上主義」に対して真っ向から批判を与えていると思われる設定や「ビジュラー」たちをメンターとして登場させての、開かれた「多様性」への言及においても、デブ・パテルの「真面目さ」が感じられて素晴らしいと思う。

とにかく愚直にやりたいことを全て投入して、映画に対しての誠実さは強く感じる分、ショットも丁寧に撮られているので、今後もどんどん監督して欲しいと思える。
ただ「俳優は顔を映して欲しい」という自我が出てしまったのか「ハヌマーン」のマスクをほんの少ししか被っていないのは、大きな減点だと思う。
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