りっく

マエストロ:その音楽と愛とのりっくのレビュー・感想・評価

3.0
音楽家である夫と女優である妻の夫婦生活を中心に展開する本作は、カラーとモノクロの転調、年月や空間を大胆に省略するジャンプカットの使用、現実に創作が割って入るミュージカルシークエンス等、随所に映画的な技巧が凝らされている。また若年から老年までを演じたブラッドリー・クーパーとキャリー・マリガンの演技は見応えたっぷりだ。

だが、この夫婦の内面に観客が入り込める作りかと言うと決してそうではない。ジャンプカットの多用によって描かれるバーンスタインの半生は、ダイジェストの域を越えない。内向的/社交的、人好き/人嫌いという部分での葛藤や矛盾に迫れているわけでもなく、同性愛という要素も嫉妬という感情を募らせる機能にしか過ぎない。技巧に酔った結果という印象を受けてしまった。
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