「イチってさぁ、俺にはバーカって言わないよね」
1980年代に一世を風靡したパンクバンド「銃徒(ガンズ)」。
だが、人気絶頂の最中、メンバーが起こした事件により活動休止に追い込まれることとなる。
それから30年。
リーダーであるアニマルの不純な動機をきっかけに、ギタリストのイチが中心となって「ガンズ」再結成に動き出す。
しかし、準備やリハーサルを進めるうち、各々の考え方の違いや成長の差が浮き彫りになっていく…。
パンクバンド"亜無亜危異"のギタリスト、藤沼伸一初監督作品。
藤沼監督と主演の永瀬正敏の舞台挨拶付きの回で鑑賞。
本作は藤沼監督の虚実綯い交ぜの自伝的物語であると同時に、友への鎮魂歌としての側面も併せ持っている。
真正面から自身の想いを表現しようとするその演出は、まさに"パンク"を体現しているのではないか、と思う。
登場人物とその配役も申し分なし。
只管格好良いイチ(永瀬正敏)と複雑な想いを馳せるハル(北村有起哉)、"愛すべきバカ"のアニマル(渋川清彦)に、蓮っ葉で一途な雅美(有森也実)など、心に残るキャラばかり。
実際の出来事にある程度沿って描きながらも、登場人物はキャラ立ちさせ、パンクバンド「ガンズ」が一世を風靡した当時と、歳を取り世間に埋もれてしまった現在のメンバーを対比させ、もがき抗いながら再生しようとする姿を活写している。
何より監督や俳優陣の本作に掛ける愛情が、犇犇と伝わって来るのが良い。
久しぶりの映画館での鑑賞が、この作品で良かった。
ハナマル!
2023/04/16