垂直落下式サミング

ドラミちゃん アララ・少年山賊団の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

3.0
ドラミちゃんの短編。テクノロジーに頼りきりな未来人セワシと違って、戦国時代の人たちは自分のちからで頑張ってなにかをやり遂げようとしているのが、残酷な対比として突きつけられる。
やっぱり、セワシが嫌い。ドラえもん世界の未来人が前提としているのは、ロボットという労働力を使うことは当たり前って価値観。こんなだから、自分が冴えないのを過去の御先祖様のせいだからってんで、パソコンを弾いてのほほんと遺伝ガチャをリセマラしようとするゴミが生まれるんだよ。死ねセワシ。まずは配られたカードで戦えよ!
戦国時代へ行ったドラミちゃんは、誰かに頼まれてひみつ道具を使わない。農民の子供は、みんな誰かが助けてくれるなんて、都合のいいこと思ってないから。山賊団に衣食住を提供するのも、あくまでドラミちゃんの意思によるものだ。
クライマックスの危機的状況でも、まだのび平が諦めていないから、四次元ポケットに手を突っ込んでスタンバったまま、額から汗を流して見守る。ドラえもんがのび太やセワシを成長させるには、この姿勢が必要だと思う。
戦国時代の御先祖のび平大お爺ちゃんは、散々できが悪いらしいが、しずかちゃんそっくりの女の子と大の仲良しだというし、おしずちゃんのほうも、口元を隠して山賊ごっこをしている村の子供たちのことはわからないのに、のび平は口元を隠していても正体が一目でわかる。ちゃんと愛されてんじゃん。ぜんぜん劣ってない。これは後で運動能力のみを参照したグラフだってオチがつくんだけど、だからって役に立つ立たないで人の価値なんか測れるかって思いますけどね。
おしずとのび平。たぶん結ばれる二人。家系図にツラのいい女の血筋が加わると、種としてよくなるけど、逆説的にブスと交わると不幸っていうのは、原作のドラえもん第一話からある問題点。
F先生があっけらかんと出してくる身も蓋もないルッキズムは、昭和なら笑って済まされたけれど、これを過去と未来を繋いだエスエフでやってると優生思想にもみえてくるわけで、なかなか危険な匂いを感じなくもない。ここは評価の別れるところ。
戦国時代の子供たちが山賊団を起こすって話だが、1580年は信長が本格的に台頭してきたころ。これまで各地でいろんなのが群雄割拠していた豪族や武装勢力であるけれど、ここからは弱いものが次々と吸収され淘汰され尽くされていく時代であるから、どこの誰ともわからない馬の骨が夢をみられる時代ではなくなっていく。
宮本武蔵は、実際それなりに家柄いい侍の子供だったんだろうけど1584年生まれで、十代半ばで関ヶ原や大坂の陣を経験しているとされるから、いま思えばホンモノの実戦にギリギリ間に合った世代だったんだなあ…と。