のぶ

パスト ライブス/再会ののぶのネタバレレビュー・内容・結末

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

これはほんとに今年1番の映画に出逢えた。これも縁かもしれん。
まずカメラワークや画面の色あせてる感じがたまらない。顔の接写で今は怒ってるよとか泣いてるよとか主張が激しい映画と違って遠巻きに写してくれるからスっと頭にキャラクターの考えや行動が入ってきてくれてストレスなく見れた。もちろん、大事なところは顔を切り取って強調してくれるメリハリもある。あと美術関連もかなり好きで、特にインテリアの素朴な感じが好みに刺さった。
ここからは脚本とかの話になるんだけれど、特別変わった話を描いている訳ではなく恐らく何百年も前から幾度となく描かれてる内容ではある。それを淡々と描いてしまえば正直面白みのない映画になってしまうけれど、この映画はそれぞれのキャラクターが現実にしっかりと根付いている、説得力のある人たちばかりで全員に共感し納得ができるから決して退屈にはならなかった。初恋を忘れられない気持ちもわかるし、夢や時間と共に愛する人が変わっていくのも理解できるし、自分の存在に自信が持てなくて不安になる気持ちも全て痛いほど共感出来た。
好きなシーンが後半に詰め込まれていて、12年振りに再開して夫の話をしたり何をしていたか話しながらニューヨークを回るシーン。また、夫と一緒に寝ている時にもし君と出会っていたのが僕ではなく別の人だったらと夢想するシーン。特にこのシーンはありきたりでありながらもその気持ちを痛感できた。寂しさを紛らわして即席の愛で付き合ったりとか、なにかの弾みで付き合ったりとか、付き合っている時に感じている違和感とか、そういった不安要素をみたいなのを感じた時にやっぱり「別の人と出会っていたらどうなっていたんだろう」と思ってしまう。この気持ちに対して、今ここにたどり着いたってことはここが私の居場所なのよと即座に返せる潔さはすごくかっこよかった。そしてバーで自分の気持ちを吐露するシーン。子供が出来たりもしたのかなってセリフで泣いてしまった。私たちは結ばれる縁じゃないのよって自分にも相手にも言い聞かせるように言うのが切なかった。そして最後のお別れで1人になった時泣いてしまうシーン。ここは個々人の解釈によると思うけど、きっと心の中にもし韓国に残ってたら、彼がNYに来てくれたらっていう気持ちがあの時に溢れて、別の世界線を羨ましく思ってしまったのかなと思った。別に不倫や浮気をしている訳では無いし、夫のことを愛しているのは事実なんだけれど、きっと誰しもが一人の人を完全に愛し続けることはものすごく難しいことなんだと感じた。
この映画は自分にとっての宝物になると思う。大人になって、純粋な好きという気持ちだけで恋愛ができなくなってしまった人に見て欲しい。仕事や自分の立場があって、自由に人を愛せない人はものすごく共感できると思う。
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