豚肉丸

ミュージックの豚肉丸のレビュー・感想・評価

ミュージック(2023年製作の映画)
4.6
誤って男を殺してしまった青年が刑務所に入り、そこで出会った看守の女性と音楽を通じて恋に落ちるが...というお話

期待していたアンゲラ・シャーネレク監督の最新作。『家にはいたけれど...』は全くよくわからないまま終わってしまい、難解な映画監督という印象を抱いていたのだが、本作は『家にはいたけれど...』と比べるとだいぶ物語の筋が見える分理解しやすい映画になっていて良かった。ただ難解なことには変わりないけど...

オイディプス王をモチーフにしていると聞いて確かに納得。物語は案外オイディプス王そのままで、そこに音楽の歌唱が絡んできたような感覚。
物語面に関してはただ物語の通りにしかイメージを持てず、あまり理解できないまま終わってしまったが、何と言っても映像が素晴らしすぎて圧倒。ショットとモンタージュの組み立て方が最初から最高で、映像が物語を物語っているのが良い。例えば冒頭は
霧が晴れていく→山の中に散らばった箱→死体→赤ちゃん→車→車から降りる→赤ちゃんを拾う
と言ったように、記号的な映像が積み上がって物語が語られる悦びと一つ一つのショットの美しさが合わさって最高のモンタージュを作り上げている。必要箇所以外のセリフを省き、ジャンプカットによってモンタージュをバッサリ切り捨てる乱暴さが嬉しい。

「足」に着眼を置いたようなショットが面白い。頻繁に登場する「足」のイメージは、大抵登場人物の怪我と死に関連している。だとすると終盤の主人公が建物から出ていくあのショットは意外性のある裏切りとして機能している?

とりあえず英語字幕か日本語字幕で見られるようになったらもう一度見返したい。アンゲラ・シャーネレク監督好きかも...
豚肉丸

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