こなつ

さよなら。いつかわかることのこなつのレビュー・感想・評価

3.8
愛する人を失った父と娘が、絶望から生きる希望を見出していく家族の物語。監督は、本作がデビューとなるジェームズ・C・ストラウス。音楽をクリント・イーストウッドが担当。

シカゴのホームセンターで働くスタンレー(ジョン・キューザック)のもとに、ある日イラクに出征中の軍人の妻グレイスの戦死の報が伝えられる。妻の死に自分の心の整理もつかず葛藤するスタンレーは、2人の娘になかなか事実を伝えられずにいた。突然当てもなく、娘達を連れてドライブ旅行を始め、下の娘が行きたがっていたフロリダの遊園地を目指す。

12歳の長女ハイディと8歳の次女ドーン。長女は父のいない所でこっそり戦争のニュースを観ているし、次女は母親と同じ時間にお互いの事を想うという約束をずっと守っている。母親を恋しがる娘達に事実を言い出すことが出来ず、妻の声で録音されている留守番電話の応答メッセージに話しかけるスタンレー。劇中に流れるイーストウッドの優しいメロディが3人を包み込む。キューザックが深い悲しみを抱え途方に暮れる情けない父親役を好演。娘達と上手くコミニュケーションが取れずぎこちない生活が自然体でとてもリアル。父の異変に敏感に気付き、不安を隠しきれない長女を演じたシェラン・オキーフのちょっと大人びた演技も上手だった。

フロリダの遊園地「魔法の庭」で楽しく過ごすうちに、3人の絆も徐々に深まっていく。水平線の沈む夕日が美しい海辺で娘達に真実を告げ、抱き合い声を上げて泣く3人。母親は写真でしか出てこないし、戦場でどのように戦っていたのかもわからない。あくまで2人の娘に対して母親の死をどう伝えるかという点に焦点をあてて描かれているところが心に響く。

最愛の人を失う悲しみとそれを乗り越えて行こうとする家族の再生のドラマだった。
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