こなつ

6才のボクが、大人になるまで。のこなつのレビュー・感想・評価

4.0
8年前劇場で鑑賞した作品の再鑑賞。

監督は、リチャード・リンクレイター。最新作の「バーナデット ママは行方不明」はまだ観ていないが、恋愛映画の金字塔と言われている「ビフォア」の3部作の監督としても有名。1995年の「恋人までの距離」はインディペンデント映画界から頭角を現した作品だが、それ以来インディペンデントとハリウッドを行き来する珍しい監督として注目されている。自分の道を築いている監督としてとても魅力を感じる。

この「6才のボクが大人になるまで」は、4人の俳優が12年間家族として同じ役を演じ続け、その歳月から生まれた感動の物語。

テキサスの田舎町。6歳のメイソン(エラー・コルトレーン)は母のオリヴィア(パトリシア・アークエット)と姉サマンサ(ローレライ・リンクレーター)の3人暮らし。多感な思春期を送り始めたメイソンは、やがて母の再婚や風来坊の実父(イーサン・ホーク)との交流、そして初恋と様々な経験を重ねて行く。1人の少年の6歳から18歳までの成長と家族の軌跡を描いている。実際に12年かけて撮影したドラマというのが凄い。

第87回アカデミー賞では6部門にノミネートされ、母親役のアークエットが助演女優賞を受賞している。

10代からお酒、マリファナと特に札付きの不良でなくても普通。アメリカのティーンエイジャーは本当に進んでいる。キャリアアップをして大学教員にまでなった母親も、男運に恵まれず結婚、離婚を繰り返す。そういう母親に振り回されるのも子供達だが、子供のために必死で生きる母親は逞しい。そんな家庭環境でもやがてアート写真家という将来の夢を見つけ、母親のもとを巣立っていくメイソン。ミュージシャンを目指して挫折しながらも、子供達に心底愛情を注ぐ不器用な父親をイーサン・ホークが好演。ゲームや携帯電話など当時の流行りを上手く取り入れながら、可愛くて無邪気だったメイソンJrが、長い時を経て青年に成長していく姿をとてもリアルに描いている。

「ビフォア」の3部作も18年間、9年後の2人を2回に分けて追いながらメインキャストを変えずに時を追っている。役者としても長い期間、同じ役に向き合うというのは並大抵なことではないだろう。本作の姉サマンサ役のローレライが監督の娘だというのも興味深いし、2つの作品に出演しているイーサン・ホークと監督の信頼関係なくしては出来なかった作品かもしれない。

久しぶりの鑑賞、また新たな感動が湧き出た素敵な物語だった。
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