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エターナルメモリーのlily0x0のレビュー・感想・評価

エターナルメモリー(2023年製作の映画)
3.7
愛する人に忘れられる辛さは計り知れないけれど、愛する人を忘れてしまう辛さも同じくらい辛いのだろう
それでもお互いに愛し合っているからこそ一緒にいたいと思い乗り越えて寄り添い続けることができるのだと思った
鏡の中の自分も認識できないほどアルツハイマー型認知症が進行している状態での二人暮らし
仕事もしながらなんてパウロの介護負担、疲労は相当なものだと想像できるけれど、最期まで添い遂げたこと、真の愛情があってこそだと思った
愛があっても実現できないことも多いのに彼女は体力的にも精神的にも非常にタフな女性なのだと思う

けれどそれでもパウロはゴンゴラのことを認知症だと分かっていても、自分のことを忘れられるのは辛くて、神に祈るような気持ちで心の中からどうか自分のことを忘れないで、と彼に訴えかけるシーンが何度かあって、見ていて胸が締め付けられる思いだった
これを言ってもどうせ忘れてしまうだろう、また同じことを繰り返すだろうと分かっていても、それでも忘れないで、と言わずにはいられないといった心境がとても辛かった

認知症のリアルも見せてくれて、夫婦になって一生を添い遂げるということの重みを実感した反面、愛情があればここまで進行しても楽しい時間ももちろん共有できるし一緒にいられるのだ、とも思い、どちらかがゴンゴラのようになっても一緒にいたいと思えるような人と出会えて幸せな人生なんだろうなと思えた

彼の著書を送った時の献辞の言葉が記憶についてで、印象に残った
記憶について改めて考えて、記憶というものがアイデンティティを作っているということ
記憶があることも含めて、その人と言えるということ
最近鑑賞した「瞳をとじて」の中で、「記憶のない父を父だと認識できない」といったセリフがあったのを思い出した
何を持ってその人と言えるのか、という要素の中で記憶は最重要なのだと思う
それが奪われてしまう認知症にはならなくて済むのならなりたくないし予防していきたいと強く思ったのであった
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