こう

ビヨンド・ユートピア 脱北のこうのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

忘れないように。

これが全てリアルな映像であるということが信じられない。
というか、信じたくない。
とにかく、衝撃的な映像ばかりで息が止まりそうだった。画面から目を背けたくなるシーンもあった。ずっと涙が止まらなかった。啜り泣きの音も多く聞こえた。

特に印象に残ってるのは2点

まず、脱北をする家族が金正恩のことを元帥様と崇めていること
どんなに現実が辛くとも、自分たちは(他の国に比べれば)幸せである、これらの幸せは元帥様のおかげと信じている様子が衝撃だった
洗脳の恐ろしさ、教育の持つ影響力の大きさを痛いほど感じた
特におばあさんの一言、「元帥様は努力をしているのに国が発展しないのは国民が愚かなせいなの?」このような一言があったと思うが、言葉を失ってしまった
外の国に住んでいる私たちには、北朝鮮の人々が金一家を崇拝しているなどにわかには受け入れられないし、信じられない
ただ、長い間金一家を称える教育を受けた北朝鮮の人々にとっては「元帥様こそが正しい」これは疑いようのない真実であり、崇めていた指導者の像が嘘で塗り固められていることを受け入れることは非常に困難だろう
信じていた元帥様の像が虚構だということを認めるということは、ひいては自分の人生、アイデンティティまでも否定することに繋がるから

次に、ブローカーたちについて
脱北に力を貸す彼らの多くは慈善事業としてではなく金銭目的だということが重く心に残っている
彼らももちろん命の危険を承知の上で、それでもお金が必要で、「脱北者をカネとしか見ていない」けど、脱北者は一縷の望みをかけて彼らに大金を払う
先ほど「慈善事業」という言葉を使ったが、このような言葉が出てくるのは
私が、食うに困らない国に生まれ、教育を受け、特に不自由のない環境で育ったからに過ぎず、
もし自分も同じ環境に生まれていたら、死に物狂いでお金を集め、他の人々のことを気にかけるような心の余裕などないだろう
観ながら、性善説や道徳という言葉について考えた 人々が道徳的なふるまいをする(できる)かどうかには非常に深く環境が関わっている、改めてそう思った
そして、映画で取り上げられている人々の生への強い意志を痛いほど感じた

私は日本人として生まれているが、北朝鮮のこの現状は、日本にも責任がある。全ての日本人は原罪を背負っている。
この映画を観て、自分がいかに恵まれているかを噛み締めたり、北朝鮮の人々を可哀想に思ったりすることは、あまりにも恥知らずで無責任だと思う。
真摯に歴史に向き合い、日本が犯した罪を認め、現実から目を逸らさず、そのような中で自分は何ができるか?を考える必要があると感じた
自分の生き様が恥ずかしくなった
現在、ミーム的に北朝鮮の「コンギョ」や金正恩の画像が使われる様子が見受けられるが、この映画を観た今、軽い気持ちでこれらのミームに乗っかることはできないと思った。
私も軽い気持ちでこれらを面白がったことがある、自分が恥ずかしい。

大事な息子を失っても命を張って脱北者の支援を続ける牧師、覚悟を持ってこの作品を制作した製作陣に心の底から敬意を表します。

ひとまずは歴史の勉強と聖書の勉強
こう

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