Nora

マリウポリの20日間/実録 マリウポリの20日間のNoraのレビュー・感想・評価

5.0
マルウポリに前線が突入してきたが、記者たちは記録を撮るために残った。
監督は言った、This is painful This is painful to watch but must be painful to watch
とてもつらい。観るのはつらい。でも観ていてつらくないといけない。

戦時下では人はレントゲンのようにはっきりする。いい人間はより良くなり、悪い人間はより悪くなる。
店から物を盗む人たち。
亀を大切にバケツにいれ、家族だと微笑む老人男性。

無慈悲にも病院や学校を狙う。
友達とサッカーをしていて爆撃に遭い亡くなった16才少年の父親の慟哭。

医師は怒りながらこれをフィルムに収めてくれ。プーチン見てるか?ここに運ばれてきているのは普通の善良な市民だ。子供すら殺すのか?と。

泣きながら子供を抱きしめる母親たち。
子供2人亡くした母親、誰が子供たちを返してくれるの?と泣き続ける。
病院の地下には助けられなかった方々が眠っていた。新生児もいた。
医師はつらすぎる。今は夜になると思い出すようになったと。

埋葬する人々もいた。埋葬していた男性に「今は何を感じる?」と質問すると「今は言葉を発するだけでも泣きそうだ。」

大きな荷物を引きながら歩く男性に声をかける。「何をしてるの?」「妻のところまで行くところ」「何があったの?」「家が吹き飛ばされた、何もなくなったよ。それが人生だ。」
「どこまで行くの?」「ここから歩いて4時間のところだ」「こんな銃撃だらけの中を?」「他にどうすりゃいいのさ」
淡々と答えて黙々と荷物を引きながら歩いて行ったおじいちゃん。

メディアは全てフェイクニュースだと怒るロシア側。もうなにがなんだか。

アカデミー賞を受賞した本作ですが、監督はこれを作りたくなかったそう。受賞も複雑な気持ちがあるのではないだろうか。

それでも命がけでフィルムをまわし続け世界へ発信してくれた。
Nora

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