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夜明けのすべてのmasososoのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.0
この社会、みんな大なり小なり苦悩は抱えて生きてるもんなんだよね。
大事なのは想像力と理解しようとする姿勢だなと思わされた。

藤沢は山添のことを仕事も碌にしないで炭酸水飲んでばかりいると感じていたし、山添も栗田科学の人たちのことを向上心のない人達と誤解していた。第一印象は当てにならない。でも印象が変わるためには当人が相手に対して心を開かないと。でなければいつまで経っても本質は見えてこないのも事実で。
僕自身最初に山添を見て、スマートだけど自分本位で協調しない今時の若者風だな、なんて思ってた。でもそれは自分の目と価値観に合わせて都合よくトリミングした山添だったし、その彼に今時の若者なんてレッテルを貼ってしまえば理解なんて程遠い。

少しずつ表情が和らいでいき、発する言葉からも角がとれていく山添を見るのは微笑ましかったな。だから辻堂が鑑賞側の自分に立ち位置が近くて感情移入をしやすいキャラクターだった。移動式プラネタリウムのことを熱っぽく語る山添を見て辻堂と一緒に涙ぐんじゃった。

すごく繊細に心を描いた映画。直接的な表現ではなくて間接的な、ほんの少しだけ自然に心が触れ合う、そんな瞬間の積み重ねが心を解きほぐしていくのが優しくじんわりと伝わってきた。
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