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オールド・フォックス 11歳の選択のmasososoのレビュー・感想・評価

3.7
11歳のリャオジエは父親と二人での貧乏暮らし。亡き母親の夢だった理髪店を開くことが父子の夢でもある。
こまめに給湯器のガスを止めたり、蛇口からの滴を浴槽に貯めるなど慎ましい節約をしながらも二人の生活は心豊かなものだった。

そんな折、バブルで不動産価格が高騰し店を買う夢は遠のき、今の生活も危ぶまれる状況となる。
リャオジエの成功を渇望する姿勢を大家のシャは見出し、彼に知恵を与える。
シャと父親の考え方の間でリャオジエは揺れ動き、これからの生き方の指針を選択する。

人の気持ちがわかること、人の気持ちに敏感なこと。
シャと父親は実は同じ特性を持っている。
けどその特性をどう使うかの選択が真逆。
シャは相手の気持ちを知った上で同情しない。むしろ不平等を利用して不平等を作り出す。相手よりも強い立場を取ろうとする。
父親は相手の気持ちを慮り、思いやりの行動を取る。それによって自らが不利益を被ったとしても。

ラストシーンで成長して建築家となったリャオジエが顧客とオンライン会議をする場面が登場する。
その家の設計はオーナーが良ければいいというものではなくて、麓の小学校への配慮が為されていて、オーナーを納得させるためにリャオジエは口八丁で言いくるめる。

行動は他者への思いやりに満ちているけど、そのやり口には狡猾な古狐を思わせる部分もあって、リャオジエは二者択一ではなくて実は両取りを選んだのではないかと思えた。


キーワード
カッターの刃は包んで捨てる。
他人のことなんて知ったこっちゃない。
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