たーへる

夜明けのすべてのたーへるのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.8
他者に説明しづらい持病を抱えながら労働することは難しい。
でも、自分が大丈夫な時に辛い人を助けることはできる。

真面目に働きたいのに病気のためそれができないというのはどんなに辛いだろう。

数年前原作を読んで本当に良くて、映画化と聞いて絶対に観ようと思っていた。

最初山添くんは自分のパニック障害と藤沢さんのPMSを同列に考えられて「お互い」頑張ろうと言われたことにイラッとするんだけど、(PMSなんかよりパニック障害の方が辛いに決まってるという気持ちから)じゃあPMSってどんな病気なんだろうとネットじゃなくて本を読んで学ぶところが良かった。

二人が関わっていくことによって、持病と付き合いながら働くことが良い方向に向かって行って、自分も栗田科学の社員の一人として二人を見守るような気持ちになった。
山添くんが藤沢さんの忘れ物を自転車で(!)届けに行き、帰りにたい焼きを買ってきて皆にお裾分けしていた時は嬉しかったよ。

最初は栗田科学をバカにしていた山添くんだったが、元職場の上司に今の仕事を楽しそうに話したり、「今の会社に残ろうと思う」と言った時の元上司の泣きそうな嬉しそうな顔で号泣してしまった。

また、持病を抱えている以外にも弟を自死で亡くしてしまった栗田科学の社長や姉を自死で亡くしてしまった山添くんの元職場の上司など、心に辛いものを抱えつつ他者と関わりながら働いている描写を観て「そうそう、働くってこういうことなんだよな。」と思った。

働くのって辛いことの方が多いけど、負けずに他者と関わってゆくといいことがあったりするよね。

あと余談ですが、ものを食べながら歩くのって個人的には苦手なんだけど、藤沢さんがおみかんもぐもぐしながら歩いていたり、帰り道肉まん頬張りながら歩いているのがとても可愛くて好きだった。
上白石萌音さんはこういう役ぴったりだな。
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