8Niagara8

夜明けのすべての8Niagara8のレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.9
二人は目に見えた生き辛さがあったが、みなそれぞれ大なり小なりの苦しみを抱えて生きている。ただその辛さの大きさは他人から評価されるものでもなく、自分が努めて向き合うものであり、しかし、他人だとしても誰かの力になることもできるわけで。
それは確かにお節介にもありがた迷惑にもなってしまうのだが、それでも精神レベルで通ずるソウルメイトのような関係性は築ける。
ただそれは別に長く続く必要があるわけでもなく、ロマンチックであることも求められない。そのようなロマンスに帰着させようとしてしまう安直さは現実でも映画世界でも定石とも言え、そこに対する違和感を浮き彫りにする。
その一連の感情の機微を捉えるのが上手い。
羨ましくもあるその感情や関係は画面では微かに煌めきを帯びていた。それは決して美しかったり、綺麗事で片付けたりできるものではないのだが、その煌めきは希望的であった。
相変わらず三宅さんの撮る画は光の加減が見事で美しく、その画面の人物たちそしてひいては我々に寄り添っている。
終盤に明らかになる題名の意は新たな地平を開き、鳥肌もので涙が溢れた。
この世のあらゆるものごとは自分一人では変えられぬものであり、それは宇宙の法則にも通ずる。そのちっぽけさは悲嘆するものではない。
持ちつ持たれつ、少しの希望を見出しながら、半歩ずつ前に歩めたら。
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