まつとも

夜明けのすべてのまつとものレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.2
2月公開だったし、物語も冬から春にかけてだから、夜深く、影も暗かったのが段々光を増して温かみを帯びていく空気が映っていた。三宅監督の前作、ケイコ目を澄ませてが良かったので原作を読んで終映間近の映画館に滑り込んだのだけど、映像化でまさに感じてみたい光景で、ただじっと眺めました。中盤から時々じわじわ泣いてた。

上白石萌音さん松村北斗さんは勿論、光石研さんはじめ栗田科学の面々がすごくリアルさを醸し出してて、映画版ではさらにPMSとパニック障害に悩まされている主演二人の他にも、誰もが何かを抱えながら生活して働いているのがよくわかる。藤沢さんの母役りょうさんの様々な場面に特に。渋川清彦さんもめちゃくちゃ良かった。涙を息子に拭かれた時の恐竜?魚?図鑑ハンカチ昔持ってた!とそんな小道具にも生活感を感じた。

自身の病気と共生しながら働く事や、不測の事態に合わせて生き方を変化させていかなければいけない事は全然あり得るし、他人事でないなと思う。原作同様に恋愛の要素が一切映り込まなかった事にホッとする。生死に関わる弱点を晒した時に男女関係なく寄り添える信頼関係は、生きづらいままでも何とかやっていけるという、自信になると思う。

全てが光に包まれているのでもなく、栗田社長の亡き弟さんの存在と社長の想いにはまだまだ影は差し込んだままのように感じる。メモは残っていても、ご本人はこの場には居ない。
まつとも

まつとも