海老シュウマイ

夜明けのすべての海老シュウマイのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
1.0
二人は最高だったし、全体として良かった気もするし、この物語を必要としている人がいるのも理解できる。
そして私にはそれが不要だったというだけのことなんだけど。

この町工場、本当に素敵な職場ですか?あなたはここで本当に働きたいですか?
なんだかんだで松村北斗は飲み込まれてしまったわけだけど、これ本当に良い話?

今、私はフルリモートで外出や満員電車とは無縁な生活をしていますが、松村北斗もそれで救われてはダメですかね。社給の服を着て近くの席の人と世間話ができるようになることが「正常」ですか?

そういう、「面と向かって直に話す」とか、「自転車で自然を感じながら通勤」とか、「たい焼きを差し入れる文化」みたいなもの、それらを善き事としてグイグイ押し付けられているように感じてしまった自分には、もともとこの物語を楽しむ素養がないのでしょうね。

そういう所作、作法を押し付けられず、忖度する必要もなく、その人がその人として自然に暮らせる状態、が目指すところだったはずじゃないのか。


そもそも、二人がもともと所属していた「大企業」のほうが一般的には福利厚生が充実していて、かつ、人員の余裕と流動性があって代わりも効くし、二人にとっては通院やら急に休んだりしやすいと思うんだよ。例えば男性の育休取得率を考えれば大企業のほうが高そうじゃない?部署の異動もなく人間関係が固定されてるのはどっち?異端としてレッテル貼られたら困るのはどっち?まあ勝手なイメージだけど。

まちこうばファンタジーは否定しないけど、その現場で厳しい「現実」にさらされて、泣いている人たちの救いになっているんだろうか。

そして、PMSを扱っているにもかかわらず、労基法にすでに存在する「生理休暇」が出てこないのは不自然だし、それが実際にはあまり使われてないことが問題なわけじゃん?そのぐらいの問題意識もないんだろうか、あえて扱っていないんだろうか。


別に映画として常に休職、休業補償やら労基法の話がマストだとは思わないけども、作り手の視点や問題意識として「社会(科学)」の視点がない以上、
結局やりたいことは「素敵ファンタジー」としての「大人の絵本」みたいなもので、そこの欺瞞性みたいなとこを受け入れられない人が一定数いることも認めて欲しいですけどね。

これが「やさしい世界」だとするなら、それこそ私には生きづらさMAXなのですが。