もち食

チャレンジャーズのもち食のレビュー・感想・評価

チャレンジャーズ(2023年製作の映画)
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イタリア人なのかなんなのか分からないが、この時代になんとも馬鹿馬鹿しい作品で笑ってしまう。『君の名前で僕を呼んで』のあのインディーらしさ=ナイーヴさが、どこに行ったのかさっぱり分からない。一体どういう人間なんだ。

主人公である女が、テニス選手Aと破局した後→最も自らを解放する手段であったテニス(本作においては通底してセックスのメタファーとされる)引退を余儀なくされるという絶望から支えてくれたAの幼馴染Bと結婚→Aと再会し、退屈しきったBとの関係を断ち「ここではないどこか」に想いを馳せ→AとBが女を取り合う試合を始める。

AとBは、非日常/日常の対比と位置づける事ができるが、そのどちらの男もなんとも人生行き詰まり感が漂っているのがなんか今っぽい。(オーバークライシス?)そのどちらにもどこか退屈さを覚える女が、AとBのテニスにより、自身がもはや手にできないと思っていた「ここではないどこか」へ行く。

なんともポリアモリー的な関係性であることが、いわゆる「三角関係」を期待する観客の目を惑わせる。予想される役割を、3人のキャラクターはそれぞれ微妙にはぐらかしている。(それは試合結果の行方にも共通する)男A、Bともに、セクシーさよりも幼児性が目立ち、女もファム・ファタール的ではあるが、通常の社会的役割を降りられずにいる。要はコメディなのである。

情熱は、スポーツと法外のセックス(=社会の外)にしかないと思っていた人間が、自らを取り合う人間同士のスポーツによって再生する。
要はコメディなのである。

トレント・レズナーの大仰な4つ打ちのバカでかい劇伴が、ことあるごとに鳴り響くことがその証左である。女を取り合う男同士のテニスというリズムセクションの上で、人間による戯れの最優先事項「ヤッたヤッてない」「別れる別れない」が散りばめられる。ドゥルーズ的ユーモア感。

モノガミー(1対1の恋愛関係)は人類の定住化/農耕牧畜化が発端と言われてますよね。
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