希子

アナログの希子のネタバレレビュー・内容・結末

アナログ(2023年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

キャストは豪華なんだけど、イマイチ。
ストーリーは、原作未読でもお話の展開はなんとなく読めるので、特に大きな驚きはなかった。

それよりも入り込めなかったのは、演出と編集がテレビ的だったことに原因があると思う。

一対一の会話シーンは基本バストサイズの切り返し、丼と角度違いの2カメ、相手の肩ナメで少しだけ印象を変えるくらい。
アドリブゾーンは切りっぱなし同ポジで楽しいひとときの時間経過を表現したかったのだけどそれに味を占めて何度も使うのは冷めてしまうし、それは百歩譲っていいとして、婚約指輪を用意してPianoでみゆきを待つ悟のシーンで使うべきではないと思った。
あの時まではうれしさやたのしさや、悟の突っ走ったおかしさを表現するのでもいいと思うが、そこまで滑稽である必要がない。

演出意図を汲み取ろうとすれば、理解できないこともないが、しっかり引き画を見せることが優先事項だったのではないかと思う。
ちゃんと背中での芝居もできる人なのに、結果的にこの編集では彼のポテンシャルを信じていないように見えてしまった。

それは彼だけに言えることではなく、全体として表情を押して撮られているので、しゃべっている方の顔がずっと見えている印象で、受けの芝居や表情以外の表現の印象がかなり薄かった。
とにかく顔を見せることを意識した作りになっていて、それ以外の余白があまり感じられず、テレビドラマ的な印象を受けた。

そんななかでも、素敵だと思ったショットはあって、それは悟のPianoで涙するシーン。
あの涙の煌めきはとても良かった。
二宮さんの涙の綺麗さが、この物語のピュアな2人の姿を正しく魅せていたと感じた。

全体としてお芝居は自然で、むず痒さまでしっかり作られていて、どれも素敵なやり取りだっただけに、演出方法に疑問を持ってしまったのが物語に入り込めない理由だったと感じた。
キャストで期待していただけに、映画的な良さを掴み損ねているもどかしい感じがなんとも残念な気持ちになった。
希子

希子