むらむら

ラヴ・アゲインのむらむらのレビュー・感想・評価

ラヴ・アゲイン(2023年製作の映画)
5.0
最近、貧乏ヒマなしで映画観る時間がなかったのだが、案の定クリスマスは絶賛ヒマになったので、なぜかおすすめで出てきたこの作品を鑑賞。

「イケメン」「リア充」「都合の良い展開」と、俺を「イラッ」とさせる要素がケーキ屋のケーキのようにてんこ盛りで並んだ、喧嘩を売ってるとしか思えないラブコメ作品。

彼氏を交通事故で失って二年。その元カレを引きずったままでいる絵本作家のミラは、元カレの携帯にメッセージを送り始める。それを受け取ったのは、新聞社で音楽記事担当の記者として働くロブ。ロブは次第に、この謎のメッセージの送り主に心を惹かれ始める……という内容。

どう考えても

「いろいろあったけど、最後、ミラとロブは結ばれました」

というオチになる作品だと思ったら、その通りになる。

「なんやこのご都合主義! タヒね!」

と言いたいところだが、ここまで都合の良い展開だと、謎の安定感すらある。

ただ、クリスマスでヒマしている俺としては、細かい点を指摘しておいてもバチは当たらないだろう。

1.ご都合主義すぎる展開

「あなたと一緒にいたい」
「あなたのいないベッドで眠るのは寂しい」
「あなたのシャツの匂いを嗅ぎたい」

こんなメッセージが独身オッサンに何度も届いてたら、確実に

「詐欺」

「ネカマ」

「AIによる社会実験」

を疑うんだけど、「実は恋人を失って寂しい美人女性」って都合よすぎない? しかも同じニューヨーク在住って……。アフリカ在住で日本語勉強中の美人中国人女子大生から俺に連日届く「あなたに会いたいの」ってメッセージも、信用して良いってこと!?

フツーだったら「詐欺メール乙!」って言って、受信拒否して終わりなんだけど、ロブ、脇あますぎじゃない? あんた一応、新聞記者でしょ?

それに、この二人、めっちゃ偶然、会いすぎ。俺が覚えてるだけでも、地下鉄の駅や劇場、レストランで偶然出会うのよ。ここニューヨークだよね? 限界集落じゃないよね?

俺の遭遇した偶然なんて、オランダでイベントいったら、昔好きだったけど留学して疎遠になってしまった女の子が現地の彼氏とラブラブなのに出くわした悲しい思い出くらいなんですけど!? (詳しくは https://filmarks.com/movies/86650/reviews/123911772 参照)

2.ヒロインのミラがサイコパス

この作品、ヒロインのミラが、「ヒロイン」というより、もはや「サイコパス」と表現した方が良いくらいサイコパス。

二年間、死んだ元カレを引きずって、

「死んだ彼氏とワインで乾杯」

とかしてるミラ。純粋な良い子だな、って思うじゃない?

それが、妹が勝手にマッチングアプリ登録したら豹変。

いきなり激烈なネット巧者を発揮して、マッチョマンを検索。速攻でデートの約束してたと思ったら、バチバチにメイク決めて髪の毛カールさせて、おっぱいがはみ出そうなブラウス着てデート会場のオシャレなレストランに向かうの、もはや別人じゃない?

しかもそのマッチョマンとレストラン出た直後に激しいディープキスしてオッパイ揉まれてるし。死んだ彼氏が墓場から生き返ってぶん殴ってきても文句いえないよ!?

なんかこんなこと書いてたら、このマッチングアプリに「妹が勝手に登録した」という設定も、昭和の女性アイドルのプロフィールと同じで、実は嘘じゃないの? と勘ぐってしまう。

新しく付き合い始めた新聞記者のロブに対しても、仲が悪くなったら

「あなたが私から元カレを奪ったのよ!」

なんてめちゃくちゃなイチャモンつけてくるし、逆にヨリが戻ったら

「元カレのことは一生忘れない私だけど、長く付き合ってね」

って、これもう、人格破綻してない? お前、元カレとロブ、どっちが選べよ!

3.新聞記者のロブも大概サイコパス

ロブの方も大概な性格。

「新聞記者の音楽ライター」って設定の癖にミラへの自己アピール

「俺はバスケとヒップホップが好きなんだ。ふふっ」

って何それ? 音楽ライター舐めんなよ!

音楽ライターだったら、例え初対面の女の子であったとしても、ヘビメタのどの曲のリフがいいとか、イギリスにおけるロックの歴史とか、「細野晴臣の日本のポップスに与えてきた影響は……」とか、そういう話題で、女の子をドン引きさせるべきじゃないの? 風貌はもうちょっとジャック・ブラックに寄せてもいいんじゃないの?

そもそも、このミラとロブが最初に出会ったときの会話、お互いのスニーカーを指さして

「あら、あなたの靴、ジョーダン1なの?」
「おやキミは、ジョーダン11かい」
「うふふっ」
「あはは」

って何それ? 

一ミリも笑う要素ないんですけど!?

「靴流通センター」でしか靴を買わない俺にとっては、宇宙人の「ピコピコ?」「ピコー!」みたいな会話と同じくらいイミフなんですけど!? 

ついでに書くと、ロブがミラにフラレて、ダメ元で

「ここで待ってるから」

と、公園でミラを待ち続けてるシーンも意味不明。

ミラをしばらく待って、ミラが来ないのに業を煮やして、とった行動が

「ミラの家を訪ねていく」

って、それ絶対やっちゃダメなヤツやん。

だったら最初っから家に押しかければ良かったやん。てか、それ、ミラに本気で嫌われてたら、単なるストーカーやん。

ついでにちょっとネタバレだけど、後半のシーンで、セリーヌ・ディオンのインタビュー記事のハズが、完全にミラへのラブレターになってて、読者も周囲も感動する……ってシーンがあるのだが、公私混同も甚だしいわ。そんな公私混同が許されるのはロッキンオンのポエムだけ。

4.そこに登場するサンタクロース、セリーヌ・ディオン

とまぁ、色々と主人公二人に関しては色々と言いたいことはあるものの、それを帳消しにしてくれるのが、この作品においては、主人公二人に何もかもを与えてくれる、サンタクロース的な存在のセリーヌ・ディオンの存在。

インタビュー中やリハーサル中でも、インタビューやリハーサルをすっぽかして新聞記者ロブの人生相談に乗ってくれる。

ロブを心配して、ミラに直電かけてくれる。

しかも「はぁ? セリーヌ・ディオンだったら証拠みせてよ」と電話口でイキるミラに、電話口で朗々と歌って差し上げる無料大サービス。さらにはミラにも仕事あげたりして、マジでセリーヌ・ディオン、トナカイに乗って登場しても良かったんじゃない?

ご存知の方もいると思うが、セリーヌ・ディオンはマネージャーで育ての親とも言えるレネと年の差結婚をしている。作中で語られてるように、レネは5年前に他界しており、そのレネの不在から回復して初めてのツアー直前という設定。

この作品では、ロブとミラに対して、セリーヌ・ディオンの口からレネとの逸話が語られる。

レネと結婚することになったキッカケや、レネを失ったことから立ち直ったという話は、フィクションと事実の枠を超えて、とても印象に残るものだった。

極めつけに作品の随所を飾るセリーヌ・ディオンの歌声。

まぁ穿った見方をすれば、セリーヌ・ディオン、この作品のプロデューサーも努めてるし、自分が目立つために主人公二人をサイコパスにしたのでは? という疑惑も拭えないが、それでもなお、セリーヌ・ディオンの輝きは圧倒的。

というわけで、サイコパスな主人公たちとサンタクロースのようなセリーヌ・ディオンを観たい人にとってはオススメの作品でした!

メリークリスマス!

(おしまい)
むらむら

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