むらむら

侍タイムスリッパーのむらむらのレビュー・感想・評価

侍タイムスリッパー(2023年製作の映画)
5.0
幕末の会津藩士が、140年後の京都にタイムスリップする話。

とても良く考えられてて、観終わったあと多幸感に包まれる作品。口コミでヒットするの分かるし、映画好きには是非みてほしい作品。

本物の侍が京都の撮影所にタイムスリップして、時代劇の「切られ役」になるという設定が秀逸だし、その設定を存分に活かした展開がとても面白い。消えゆくジャンルとして描かれてる「時代劇」自体が、滅びゆく江戸幕府に支える主人公・新左衛門(山口馬木也)とダブっていく構成が面白い。

特に後半、鹿賀丈史みたいな顔のオッサンが登場して、新左衛門が、切られ役から準主役として抜擢されるくだりからは目が釘付けになった。

主人公・新左衛門のキャラ、めっちゃ好感度高い。パジャマもちゃんと畳んで病院抜け出すし、礼節は欠かさないし、奥手で、なにより涙もろいのがいい。あと、無闇に幕末に戻ろうとせず、ポジティブ志向なのもいいよね。そりゃ、あれだけ美味しいイチゴのショートケーキ食べたら、幕末に戻ろうなんて思わないよなぁ。なんだかんだ行って、スーパーで何でも手に入る現代の日本は恵まれてる、って実感させられる。

要所要所で入る、スローモーションやパン、映像のタメなども効果的。

特に感心したのが、細かい時系列の入れ替え。

いくつかのシーンで時系列を前後させてるとこが、これまた良く考えられてて、ホント、脚本と構成を、相当練り上げて作ったんだろうなぁ、とホトホト感心させられた。

それと、タイムスリップしてきた先を「140年後」、つまり、幕末から数えて2000年代前半に設定したのも、成功の要因だと思う。スマホが登場する前で、ネットが一般的に普及していない、ギリギリの時代。もし2024年にタイムスリップしてたら、新左衛門、一瞬でネットのおもちゃになってたろうな。

コメディなのに時代劇のシーンは本格的で、まさに「真剣勝負」の迫力を感じることが出来ました。

「役者が本物に間違えられる映画」

ってのは幾つかあって、どれも面白い(「ギャラクシー・クエスト」とか「サボテンブラザーズ」とか)んだけど、この作品みたいに

「本物(侍)が役者(切られ役)に間違えられる映画」

ってのは他にあるんかな? 

(おしまい)
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