4時間バージョンがあるらしいが、私が観たのは3時間バージョンだった。
オリジナルには母と息子の近親相姦が描かれているらしいがカットされたとのこと。
どおりで主人公ボビーとその母の仲が異様に見えたわけだ……
父に対する心情も単に自分を捨てたからという憎しみだけではない、母を愛するあまりの憎しみもあったのかもしれない。
母ケイトも夫に捨てられ失った愛を息子に求めていたのかもしれない。それにしてもあの母の態度はちょっと引いてしまった。もはや母の態度ではなかった。
トム・ベレンジャーが演じる主人公ボビーは親友のカークとともに悪さ(警官に暴行)をして刑務所に。デンゼル・ワシントンが演じるカークは黒人だというだけで刑期がボビーより長い。結局は同じ刑期になるわけだが、人種差別はここにもあった。
その腕っぷしの強さゆえボビーは刑務所でボクシングに目覚め、出所後カークと二人三脚でプロを目指す、という流れ。
トレーナーに見いだされ着々と腕を上げていくが、ボビーの複雑な家族関係がついてまわる。
トレーナー兼マネージャーを演じたジョン・カサヴェテスがとても良い。一見取っつきにくそうだが、ボビーをボクシングに集中させ、親が横やりを入れてきても突っぱねる。
ボクシングの試合シーンは他のボクシング映画同様盛り上がる。しかし、盛り上がって終わるわけではない。
金儲けに走らず、慎重に試合や時期を選びボビーを育てるガスの信念を表した台詞が痺れた。「美しくあるため」だから無惨に負けてもまたリマッチに向かう。
感動とは違う、武骨なアスリートドラマと一人の男の波乱万丈ドラマだった。