このレビューはネタバレを含みます
グランドシネマの池袋IMAXにて。
アメリカ合衆国にある豊かな自然。そこに古くから住まうネイティヴアメリカンのお二人、元宇宙飛行士の男性とアラスカ出身のエコロジストの女性の自然を巡る活動を通して、豊かさと神秘に満ちた地球を改めて見つめ直す。
日本語吹替は宇宙飛行士の野口聡一さんがナレーションを担当されている。
この野口さんの説得力が凄い。数少ない宇宙に行った人の言葉の重みが逆に心地良い。
映画館ではただ迫力ある映像を観るだけの我々に、芯のある言葉がよりこの映画を見る経験を形作り、とても素晴らしい体験をさせてくれる。モーガン・フリーマンのナレーションも心地良いだろうけど、こればかりは代え難いものだろう。
本作ではfull size IMAXを存分に活かした自然の雄大な映像を中心に、お二人が自然を通した活動をする様が描かれる。時には宇宙に行ったり、歴史を遡ったり。そして今現在アメリカの自然の中で活動されている方々を交えた様子も描かれる。
もちろん自然をテーマにしたドキュメンタリーだし、啓蒙的ではある。アメリカ中心、というかほぼほぼそれしかないからだけど、そういうのを嫌な人もいるだろう。更に中にはただジョギングやハイキング、キャンプにロッククライム、カイトサーフィンに勤しむだけの時もある。自己満足な活動にしか見えず、それで自然は素晴らしいと言われるから、たまったもんじゃないと思うかもしれない。
しかし個人的にはこの何処か牧歌的な様子が、よくある自然啓蒙ドキュメンタリーとは違い、今の我々を肯定的に捉えていると感じた。かつてネイティヴアメリカンの人々が、山肌に築いた集落の遺跡が出て、そして今の大都市の公園が出て、それをとても感じた。
現代に生きる人はその多くが都市部に居を構え、自然を体感する際はその多くが娯楽的なアクティブとなっている気がする。普通ならそこを批判否定し、自然をもっと敬う行動を起こさせようとする。
人間は今や宇宙にも進出し、果ては他の惑星でも生活しようとしているし、トム・クルーズは新作で宇宙空間で撮影する。近代化された都市も多くあり、道は舗装され木々も人為的に植えられる。衛星技術も発達し、人類未到の地は最早無いのではないかという程調べ上げられている。
本作ではより積極的に都市部にある公園や人々の営みを写している。スペースシャトル発射の模様も描かれる。気球を使って空も飛ぶ。列車にも乗る。都市の公園を歩く。
野口さんのナレーションに「人間も地球の一部だ」と語られる。
人間は地球を自らの生活に適するように形を変えてきた。克服とも言えるかもしれないが、そのおかげで今我々は安全で便利な生活を営むことが出来る。自然でのアクティブを楽しむ事が出来る。技術が飛躍的に発達したおかげで、自然環境にも優しいエネルギー開発も積極的に出来るようになってきている。
これは、人類が地球で生き延びてきた末の証でもある。
本作では無闇矢鱈な自然回帰を叫ばず、今の人間の自然への接し方に対して非常に肯定的に描く。都市の使わない部分を公園にする。大いに結構。古くなった路線を自然を楽しめるサイクリングロードにする。大いに結構。自然の中をマラソンする。大いに結構。兼ねてから人類は、自然を切り取り生きてきた。それらが形を変えただけなのだ。科学的な検知も補いながら、改めて自然に触れてみてはと問いかけてくる。
人間讃歌も捉えながら自然の素晴らしさを改めて感じさせる。とても楽しい時間を過ごし、観終われば改めて自然ともっと関わろうと思えてくる。